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☆番外編あらかると☆
第3章 愛しては、ならない――切ないwhite day
剛はそんな菊野が可愛く見えて笑いを溢す。腕の中に居た時には大人の女性の薫りを放ち剛を戸惑わせた彼女が、今はまるで自分よりも年下の女の子のようだ。女性とは不思議な生き物だ。大人と少女の間を行ったりきたりして、空模様が毎日、いや一瞬たりとも同じでないのと同じように、その表情をくるくると変える。
目が離せない――と思うほど、剛は菊野の事が最近無性に気にかかるのだ。
それが何故なのか、自分にも分からないが……
「じゃあ……洗濯物を取り込んできますから」
「あ……あのね」
ドアノブに手をかけて出ていこうとする剛に菊野は声をかける。
口元をゆるめて振り返る彼の表情が優しくて、菊野はまた泣きそうになってしまう。
「……は……初恋は……悟志さん……とは違うの」
「――え?」
――私が初めて恋したのは……貴方なの……
という言葉を呑み込んで、菊野は言った。
「初恋は……絵本の王子さまかな……」
剛は目を丸くするが、柔らかい笑顔になり鈴を転がす様な声で言った。
「菊野さんらしいですね」
「えへへ……変かな」
菊野は舌を出して決まり悪そうにする。
胸の中では吐き出されない恋情が渦巻いていた。
菊野にとっての王子は剛なのだ――
「いいえ……でも……絵本の王子にも妬けますね」
「え……」
菊野の目が潤んで盛り上がる。
剛は、自分が放った言葉に自分が驚いて、暫し呆然とドアノブを持ったまま、菊野と見詰めあって立ちすくんだ。
一本の張り詰めた見えない糸が二人の間にあって、緊張に耐えきれず切れてしまうのかと思った瞬間に、玄関から大きな祐樹の声が聞こえた。

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