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☆番外編あらかると☆
第2章 恋の速さはallegro non troppo
目覚めてしまった甘い欲を彼に知られたくなかった。でも彼を振りほどけず、キスを受け入れて溜め息を吐いた。
耳朶を掠める熱い息が媚薬の様に目眩を起こさせて、正気も失ってしまいそうだった。
祐樹の瞳が少し潤んでいる様に見えたが、錯覚ではないだろうか、と美名は疑ってしまう。
――そう、正気に戻らなくちゃ……これは何かの間違いよ……西君が……私に……なんて、そんなのありえない――
美名は、彼の甘い唇の責めに陥落寸前だったが、懸命に自分を保とうと必死に今日の出来事を思い出そうとしていた。
――一体、何故こんな事になったの?こんな筈じゃなかったのに……
今日はクレッシェンドとライヴをして、綾波と休み明けの打ち合わせをして、皆にチョコレートを渡して――祐樹には実は本命の手作りを用意してあった。真理と由清、綾波やクレッシェンドのメンバー、お世話になっているスタッフに渡す流れで、然り気無く同じように祐樹へあげるつもりだった。
とても二人きりになる勇気も無かったし、『うわ、めちゃ本気じゃん』と軽くかわされてしまったらどうしよう、と思って怖かった。
祐樹は雲の上の王子なのだ。クレッシェンドのフロントマンで、優しげな中に時おり見せる鋭さや、甘い声に夢中な女の子は日本中に沢山いる。
自分はその中の一人に過ぎないのだ。

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