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迎春花が咲く
第4章 近づく不穏
もちろん、言い逃れをされないようにどちらかの自分の傍にいてもらうようにお願いするなどの多少の工夫はした。
だが「私たち2人でこの家を回している状態なのです。申し訳ありませんが引き留められますと業務が滞ってしまいます」と言われてしまう。そんなことを言われたら引き下がるしかない。
だがそんなことを言いながら夫の部屋に出入りする崎枝さんを何回も目撃した。髪を結びしっかり服を着たいつもの様子の時もあれば髪を下し胸元を肌蹴させた艶めかしい雰囲気の時もある。部屋で何をしているのかは知らないし知りたくもない。夫と女中が不貞を働いているなんて世間体が悪いが特に嫌な気持ちだとかは芽生えて来なかった。
伊野さんはこの家に来て以来ほとんど留守だ。週に1回ほど訪れてはいるようだが忙しいのか崎枝さんや宮子さんに何か指示を出してすぐに行ってしまう。
家に帰りたい。実家からの手紙は欠かさず毎週やってくる見慣れた字を見るたびにそう思う。実家にいたときに感じていた多少の不自由など大したことがないのを痛感する。
だがそれでも帰ることを本当に実行するほどの行動力は湧いては来なかった。
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