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白衣を脱いだら~熟れた蜜の囁き
第8章 昔語り(2)
M女子大学二年のとき、地元で成人式があった。

式が終わると、下心の透けた同級生たちから飲みに行こうと誘われたが、Kが「二人でお祝いをしよう」と言ってくれていたのですべて断った。

神戸でも高めのホテルを、彼はおそらく無理をして予約してくれていた。夜景を眺めながら、嬉しさに思わず涙が出たのを今でもはっきり覚えている。

その夜はそのままお泊まりだった。彼の腕の中に抱かれながら、私は初めて「ここにいていいんだ」と心から思えた気がした。

彼の指先が私の髪を撫でるとき、私は目を閉じ、ただその感触に身を委ねていた。それは急がず、一つひとつ確かめるような優しい触れ方だった。私の体はその優しさに応え、静かに熱を帯びていった。それは強烈な快楽というよりも、確かな安心感だった。彼とさえいれば、私は自分を壊さずにすむのだと思えた。

だがその安心の裏側で、私はふとした瞬間に自分を壊したくなる衝動に駆られていた。

夜中にふと目を覚まし、彼の穏やかな寝息を聞きながら、誰かに激しく扱われたいと願う自分がいた。優しく撫でられるだけでは到底足りない。もっと深く、もっと容赦なく、私の中の汚れてしまった部分を抉り出してほしい。そんな欲求が意識の底でうねっていた。

それを「私であるはずがない」と否定しながらも、体の奥では確実に熱を帯びていた。そしてKと付き合っていたころ、一度だけ、他の男の人と体を重ねた。

その相手は、友達の付き添いで足を運んだパーティで知り合った、社会人のMだった。年は十歳ほど上だったと思う。パーティで意気投合し、パーティーが終わったあと、私と友達、Mとその友達の四人で北新地へと繰り出した。

名刺を見せてくれたが、彼はまぎれもない一流企業のサラリーマンだった。北新地で一通り飲んだ後、「二人で飲み直さないか」と誘われ、私は「少しだけなら」と答えてしまった。

その瞬間、私の中で何かが大きく音を立てて動いた。Kの顔が脳裏に浮かび、胸が鋭く痛んだ。だが、その痛みをむしろ無視したくなる自分がいた。自分を裏切るようで恐ろしいのに、どこかでそれを期待している。その矛盾が静かに苦しかった。

私は「少しだけなら」と口走ったとき、すでに体の奥底で熱を孕んでいたことを、後になって思い知らされる。意識は「ダメだ」と叫んでいるのに、無意識はすでに彼の大きな手を待ちわびていた。



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