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ヒミツのカルテ
第1章 咲希(32)不感症?
咲希はぼーっと白い天井を見つめながら、先ほどまでの信じられないような自分の姿をぽつりぽつりと頭の中で思い出していた。
(あんなに大きな声を出しちゃって……自分から腰を動かして、あんなに感じて……)
思い出すだけで、火照った頬がさらに熱を帯びる。
あれほど長年悩み続け、誰にも言えずに苦しんでいた「不感症」――。身体のどこが冷え切っているような感覚さえあったあの悩みが、まるで嘘のように、今日の施術で完全に打ち砕かれてしまった。
(私、ちゃんと感じられた……。あんなに激しく、頭が真っ白になるくらい……。今までの悩みは、いったい何だったんだろう……)
出口のないトンネルの中にいたようなこれまでの絶望が、心地よい疲労感とともにすっきりと洗い流されていくのを感じる。
ぼんやりと過去の悩みを振り返っていると、カチャリとドアの音がして、川島が静かに部屋へと戻ってきた。
「お待たせしました、咲希さん」
手には、ふわりと爽やかな香りを漂わせる温かなハーブティーのカップが乗ったトレイが握られている。
咲希は乱れていたガウンの裾を整え、ベッドの端へと行儀よく腰を下ろした。
「…どうでしたか?初めての感覚に、少し驚いちゃいましたよね」
向けられたその真摯なまなざしに、咲希は少しだけ恥ずかしそうに目を伏せたが、すぐに真っ直ぐに川島を見つめ返した。
そして、飾らない、ありのままの想いを言葉にする。
「……すごく、気持ちよかったです。私、ずっと自分の身体のことがわからなくて、何してもダメなんだって思い込んでて……。でも…あんな風になれたの、人生で初めてでした。もう怖くないかもしれません…ありがとうございます」
少し照れくさそうに、けれど嘘偽りのない感謝を込めて告げる咲希の言葉を、川島は慈愛に満ちた優しい瞳でじっと受け止めてくれた。
「……正直、もう少し時間がかかるかと思っていましたけど、咲希さんの身体はもうすっかり、自分の感覚を取り戻す準備ができていたんですね。もう大丈夫そうね」
川島は安心させるように柔らかく微笑む。
「また不安な時や、心が怖くなった時はいつでも来てくださいね。」
咲希の胸につかえていた最後の曇りがすっと晴れていく。
背負っていた重い荷物が嘘のように消え去り、咲希の心はどこまでも軽やかに、穏やかに満たされていくのだった。
end

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