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キウイ基地ーポルノ女優と過ごした夏
第1章 こんにゃくと、レジのお姉さん
 祐介は幼少の頃から果物の中でもキウイフルーツが一番好きだった。俵型の見た目も可愛く、ふさふさとした産毛も気持ちいい。輪切りにしたときの、中央の白い部分が放射状に伸びているさまや、つぶつぶの黒い種の散らばり具合も、すごく綺麗だ。なによりも口に含んだときの、爽快な甘酸っぱさには、少年ながら妙なトキメキを覚えた。
 裏山の中でも日当たりの良いこの場所に、祖母がキウイフルーツの苗木を植えたのは、幼い孫に「おばあちゃんの作ったキウイフルーツを食べさせたい」という愛情にほかならない。
 この木にはもう一つ、思い出がある。祐介が生まれる前から実家で飼われていた柴犬のドンが、この木の下で眠っているのだ。ドンはいつも祐介と一緒にいたがっていたから、祐介の好きなキウイフルーツの木の下に埋めてあげよう、これも祖母の考えであった。
 祖母が死んでからは、誰も裏山によりつかなくなり、管理もしていなかったので、いまではキウイフルーツの木もすっかり雑草に覆われている。
 家族からも忘れ去られたこの地に、祐介がひとり訪れたのは、高校受験に失敗した今年の春先のことだった。
 高校受験に失敗──。つまり、祐介はいま無職の十六歳である。中学卒業後、就職する同級生も数名いたが、祐介の母親はそれを許さなかった。浪人して来年こそ高校に入りなさい、とのことだった。祖父もいまの世の中は学歴社会なのだから、とどこかで聞きかじったようなことを、厳しい顔で言ってきた。
 高校受験に失敗した理由は、単に祐介の頭が悪かったからだ。とにかく勉強がまったく分からない。昔から得意でなかったが、中学生になってからは、数学も国語も英語も何もかもちんぷんかんぷんになった。それこそ中間テストや期末テストはほとんどの教科が赤点だった。かといって勉強をサボっていたわけではない。授業中は先生が黒板に書くことを懸命にノートに写していたし、テスト前は自分なりに勉強をしていたつもりだ。だけど、どんなに頭を働かせても、わからないものはわからない。
 祐介の不出来に関しては、一時期、母親や中学校の担任教師は、父親を亡くしたショックが影響しているのではないか、と考えていたようだが、それはまったく関係ない。
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