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キウイ基地ーポルノ女優と過ごした夏
第1章 こんにゃくと、レジのお姉さん
「そうなんだ? じゃあ、中卒?」
 レジのお姉さんはゆっくり歩いていた。祐介は彼女に追いつかないように、一、二歩あとをとぼとぼ歩いていた。並んで歩くことは、恥ずかしくてできなかった。
「あ、はい。いまのところは……でも、来年こそ高校に……」
 祐介は地面を見ながら言った。後ろに伸びた彼女の影があった。なんとなく影を踏むのはよくない気がして、よけて歩いていた。
「そっか。高校に行きたいのね」
 歩く速度だけでなく、レジのお姉さんはしゃべり方ものんびりしていた。
「え……ま、まあ」
 本当は行きたくない、というのが本音だった。知能も精神年齢も三、四年は遅れていると聞いた時から、同じ年の人と比べられる、学校というものが怖くなっていた。もちろん、働くことも大変だと思うけど、学校よりずっとマシな気もしていた。
 受験に落ちた後、中学の担任教師が中卒者を募集している就職先をいくつか教えてくれた。ほとんどが工場での流れ作業だったが、難しいことを考えないで済みそうだ。ロボットのように決められた動きをしているほうが、自分には合っていると思った。
「へえー。私は、中卒だよ」
 レジのお姉さんが急に立ち止まった。
 空に、飛行機雲がかかっていた。レジのお姉さんは飛行機雲を眺めたあと、なぜか朗らかな笑みで、祐介のほうへ振り返った。
「そうなんですか!?」
 祐介は素っ頓狂な声を出した。
「そうよ」
 レジのお姉さんはなぜか自慢げに、アゴを軽くあげながら言った。
「あっ……」
 気づくと、祐介は彼女の真横に来ていた。並んでわかったのだが、彼女は祐介よりも十㎝ぐらい背が低かった。
 レジのお姉さんが上目遣いで祐介を見つめてきた。こんなにもまじまじと母親以外の異性から、顔をのぞき込まれた経験がなかったので、祐介は気が動転した。それでつい、
「あの、頭が悪いんですか!?」
 失礼極まりない言葉を口走ってしまった。
「あーーー!」
 レジのお姉さんは目を丸くして、蝉の大合唱もかき消す大きな声をあげた。
「あ、いや……」
「君、いますごく私のこと、バカにしたでしょ!」
「ごめんなさい! ごめんなさい! 違うんです! 僕、思ったことをすぐ口にしてしまう癖があって。アッ、違う、そんなこといったら、余計にダメだ。えっと、その……頭が悪いのは僕であって、その……一緒にして、ごめんなさい!」
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