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キウイ基地ーポルノ女優と過ごした夏
第1章 こんにゃくと、レジのお姉さん
「……あ、はい」
「そっか。大丈夫よ」
 レジのお姉さんは歌うように言った。それから最後の一口となっていたメロンパンをぱくりと口の中に放り込んだ。
 一連の動作を見る限り、具合が悪いようには見えない。それどころか、上目遣いでまじまじとこちらを見つめてくる視線は、どこかイタズラで、祐介を冷やかしているようにも見えた。
「すみません。それだけです」
 とにかく無事を確認できたから、早く立ち去ろうと思った。できれば逃げ出したことも謝りたかったが、異性とそこまで話を続けられる自信もなかった。
 祐介はもう一度軽く会釈して、いま来た道を振り返った。
「ちょっと待って」
「え? はい」
「ねえ、何も持っていっていないよね?」
 レジのお姉さんはまだメロンパンが口の中に残っていて、もごもごしながら聞いてきた。
「え? 僕? はい、何も持っていませんよ」
 とりあえず両手を出して、アピールした。
「そういうことじゃなくて、さっき、万引きとかしていないよね?」
 レジのお姉さんがジーンズの太ももをパンパンと手で叩きながら言う。メロンパンの屑を払い落としているようだった。
「万引き!?」
「うん。てっきりそうだと思っていたけど」
 言いながら、レジのお姉さんはベンチから立ち上がった。
「違います、違います。僕はただ、こんにゃくを買いに来ただけで……」
「こんにゃく?」
 しまった。レジのお姉さんも一瞬、険しい顔となった。
「あ……いや。お母さんに頼まれて……」
「ふーん。まあ、わざわざ戻ってきたんだから、万引きをしていないのはわかった。ごめんね、疑って」
 あっさり謝りながら、祐介のほうにずんずん近づいてきた。一瞬、また追いかけられるのか、と思ったが「ちょっと、そこどいて。自転車」レジのお姉さんは、どうやらこれから帰るところのようだった。
「すみません。じゃあ、これで……」
 祐介はそう言いながら、立ち止まっていた。至近距離まで近づいてきたレジのお姉さんの体から、ふんわりとシトラス系の爽やかな匂いがしたからだ。香水だろうか。大人の女の人のイイ匂いに、十六歳の青年は文字通り、ウットリしていた。
 レジのお姉さんは最近買ったばかりと思える真っ白なママチャリを自転車置き場から出してきた。そして、傍で立ち尽くしている祐介に対して、
「そういや、こんにゃくは結局、買ったの?」
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