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禁忌の鍵を外す夜【短編】
第1章 禁忌の鍵を外す夜
「まだ…、行かないで。……明日から…、もうあなたが私の髪を乾かしてくれることはないのね」
振り返り、白城を見上げる。
彼は悲しげに目を伏せ、私の前に膝をついた。これで視線が同じ高さになる。いつもは私を見下ろす位置にいる彼の、この従順な姿勢が、かえって私の心を狂わせた。
「私は執事ですから。お嬢様のお側を離れても、あなたの幸福を誰よりも願っております」
「…嘘つき」
私は掴んでいた彼の手を、自分の頬へと導いた。手袋越しでも、彼の熱が伝わってくる。
「……ねえ、白城…。一度でいいから、私を『お嬢様』じゃなく、名前で呼んでほしいの。最後のお願いだから」
白城の瞳に、獰猛なほどの葛藤の炎が灯る。
彼は一度目を閉じ、深く息を吐くと、片手でゆっくりと手袋を外した。
剥き出しになった彼の素肌が、私の頬に触れる。そのあまりの熱さと、指の太さに、心臓が爆発しそうになる。

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