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『帰り花の夜に』~義母の静謐なる背徳
第1章 プロローグ
薬局の営業が終わり、最後の業務も片付けた。

薬局長が白衣を脱ぎながら、扉の前で振り返る。

「美香先生、今年も一年お疲れ様でした。来年もよいお年を」

「こちらこそ、ありがとうございました。薬局長もよいお年を」

局長が先に出ていく。シャッターの音が遠くで鳴り、店内は急に静かになった。私は、最後の鍵閉めのために店内に残った。照明を落とし、レジ周りを軽く拭き、金庫の確認をする。いつもの年末の作業だ。

すべてを終えて、バックヤードの椅子に腰を下ろす。スマホを取り出し、里香の番号を押した。

「もしもし、里香?」

「あ、美香。終わった?」

「ええ。今、店の鍵閉めてるところ」

「お疲れ。で? 年末年始、どうするの」

里香の声は、いつものように気安い。唯一、私と「いちくん」の関係を知っている親友だ。

「別に普通よ。家でゆっくりするくらい」

「ふうん。で、姫一は誰とするの? いちくんと?」

私は小さく息を吐いた。

「……いきなりそれ?」

「だって、気になるじゃん。年末年始の休みの間、いちくんに会えなくて寂しくないの? 美香、会えないとそわそわするタイプでしょ」

「寂しくないわけないでしょ」

「でしょうね。で、今日はどうするの。もう会う約束してるんでしょ」

私は、少し間を置いて答えた。

「……してる。今日、会うの」

「やっぱり。どこ?」

「いつものホテル」

「昼間から? 休み前の最後ってことで、長めに?」

「……四時間くらいの予定」

里香が、短く笑った。

「いいね。会えない分、今日は燃えるんでしょう。ねっとりしたエッチするんでしょ。いいなあ……エッチできて……美香、いちくんのこと好きでしょ」

「……まあね」

「じゃあ、行っておいで。私は家でおせちの買い物してるから。後で報告待ってるわ。ちゃんと中に出してもらったかどうかとか……リアル中継してくれてもいいわよ」

「そんなこと……しないし、報告もしないわよ」

「美香ならしてくれるでしょ。連絡……楽しみに待ってるわよ。じゃあ、行ってらっしゃい。よいお年を、じゃなくて、よいセックスを」

電話を切る。私はスマホをバッグにしまい、最後の照明を消した。シャッターを下ろし、鍵を閉める。店から一歩でると、頬に当たる空気がやけに冷たかった。
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