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『帰り花の夜に』~義母の静謐なる背徳
第1章 プロローグ
薬局の調剤室。年末の最終出勤日、午後も遅くなっていた。
「美香先生、もう今年の業務もほぼ片付いたわね。お疲れ様でした」
先輩の薬剤師・田村先生が、白衣の袖をまくりながら声をかけてきた。
「お疲れ様です。正直、足が棒です」
私はパソコンの画面を閉じながら苦笑した。
「明日から休みでしょ? 長女さんたち、帰ってくるの?」
「ええ。葉月と、旦那さんも一緒に」
「あら、あのイケメンの? 前に写真見せてもらった、醤油顔の」
私は少し顔を赤らめた。
「醤油顔って……まあ、そうですね。優しい顔してます」
「いいわねえ。うちなんか夫がずっとリビングでゴロゴロしてるだけよ。美香先生のところは娘さん夫婦が来て賑やかで羨ましいわ」
「賑やかは賑やかですけど……正直、年末は料理と掃除で大変ですよ」
隣で在庫整理をしていたパートの若い子が笑いながら口を挟む。
「美香さん、結局楽しみにしてる顔してますよ?」
「……まあ、ちょっとだけね」
私は小さく首をすくめた。
「葉月が帰ってくると、家が急に明るくなるんです。犬も大はしゃぎするし」
田村先生がニヤリと笑う。
「犬だけじゃなくて、美香さんも大はしゃぎでしょ? 『亮介くん、お久しぶりね〜』って、声のトーンが明らかに上がってそう。お義母さん顔してるつもりでも、目が笑ってるのよ」
「上げませんよ!」
私は即座に否定したが、耳まで熱くなっているのが自分でも分かった。
「はいはい、分かってますよ。『普通におかえりって言います』とか言いながら、内心では『久しぶりにいい男の顔が見られる』って思ってるんでしょ。五十を過ぎても元気なんだから」
「もう、田村先生ったら……」
「いいじゃない。年末の楽しみは人それぞれよ。私はおせちより、美香さんの『義理の息子が来ると急に若返る現象』の方がよっぽど興味あるわ」
私は白衣のポケットに手を突っ込んで、小さく息をついた。
「……まあ、帰ってきたら、ちゃんと『おかえり』って言ってあげますよ。普通に」
「普通に、ね」
田村さんが意味深に頷く。
「その『普通』が一番怪しいのよ、美香先生」
「美香先生、もう今年の業務もほぼ片付いたわね。お疲れ様でした」
先輩の薬剤師・田村先生が、白衣の袖をまくりながら声をかけてきた。
「お疲れ様です。正直、足が棒です」
私はパソコンの画面を閉じながら苦笑した。
「明日から休みでしょ? 長女さんたち、帰ってくるの?」
「ええ。葉月と、旦那さんも一緒に」
「あら、あのイケメンの? 前に写真見せてもらった、醤油顔の」
私は少し顔を赤らめた。
「醤油顔って……まあ、そうですね。優しい顔してます」
「いいわねえ。うちなんか夫がずっとリビングでゴロゴロしてるだけよ。美香先生のところは娘さん夫婦が来て賑やかで羨ましいわ」
「賑やかは賑やかですけど……正直、年末は料理と掃除で大変ですよ」
隣で在庫整理をしていたパートの若い子が笑いながら口を挟む。
「美香さん、結局楽しみにしてる顔してますよ?」
「……まあ、ちょっとだけね」
私は小さく首をすくめた。
「葉月が帰ってくると、家が急に明るくなるんです。犬も大はしゃぎするし」
田村先生がニヤリと笑う。
「犬だけじゃなくて、美香さんも大はしゃぎでしょ? 『亮介くん、お久しぶりね〜』って、声のトーンが明らかに上がってそう。お義母さん顔してるつもりでも、目が笑ってるのよ」
「上げませんよ!」
私は即座に否定したが、耳まで熱くなっているのが自分でも分かった。
「はいはい、分かってますよ。『普通におかえりって言います』とか言いながら、内心では『久しぶりにいい男の顔が見られる』って思ってるんでしょ。五十を過ぎても元気なんだから」
「もう、田村先生ったら……」
「いいじゃない。年末の楽しみは人それぞれよ。私はおせちより、美香さんの『義理の息子が来ると急に若返る現象』の方がよっぽど興味あるわ」
私は白衣のポケットに手を突っ込んで、小さく息をついた。
「……まあ、帰ってきたら、ちゃんと『おかえり』って言ってあげますよ。普通に」
「普通に、ね」
田村さんが意味深に頷く。
「その『普通』が一番怪しいのよ、美香先生」

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