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妻であること、女であること(仮
第5章 苛立ち
「陶子さんが帰りたくないなら、返したくないです」

その言葉で、私の胸がドクンッと音を立てた。
それ、どういう意味?
私が帰らなかったらどうするの?

「でも、帰らなきゃいけないですよね。
変なこと言いました。すみません」

「う、ううん。
私も変なこと言った。ごめん。
帰って、何もなかったように…する」

西谷君がどんな顔をしているのか、私は見ることができなかった。
あまりにも西谷君が近すぎたから。
西谷君の方に顔を向けたら、そこはもう、 
西谷君の胸の中だろうと思ったから。

「じゃあ浮気のことはちょっと置いておいて、
レスのことはどうしますか?
このままスルー?」

西谷君は、私の背中から手を離すことなく、セックスレスの話を続けた。

「同時に二つのこと悩んでるから、どうすればいいのかわからないんだけど、
浮気じゃないなら…、レスのことは解決したい」

「じゃあ浮気じゃないとして、ちょっと仕切り直ししましょう。
レスになってから陶子さんが誘ったりはしました?」

「あ、あるけど…
疲れてるって何度か言われてからは
誘う勇気も無くなっちゃって」

「女の人からは誘いにくいですよね」

西谷君の低く優しい声が、私の耳をくすぐった。
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