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妻であること、女であること(仮
第5章 苛立ち
「そ、そんなことまだ考えてない」

「じゃあ、今の気持ちをひと言でいうと?」

「ひと言?」

「そうです。
悲しいですか?
それもと悔しいですか?
それとも腹が立ってますか」

その質問に、陶子さんは考えこんでしまい、
数分たってやっと答えを出した。

「やっぱり」

「え?やっぱり?」

「そう。
私ね、夫と女の人が会ってたって知り合いに教えてもらった時、
なんだかすごく嫌な予感がしてたの。
決定的な何かがあったわけでもないのに。
レスのことも、もうこんな年齢だから 
なくてもおかしくないって本当に思ってた。
けどそれでも、すごく気になってたの。
なんか…おかしいなって」

「で、今日見てしまって、やっぱり?」

「うん、そう。
年齢のせいにしてきたけど、レスだったことが、やっぱり。
知り合いが私と間違えたのも、やっぱり。
休みの日にいつも出かけるのも、やっぱり…
私の話も上の空で聞くのも、やっぱり…
やっぱりっ…そうなんだよ。
やっぱり、っう、やっぱり…」

陶子さんは、
せっかく綺麗にお化粧している目をハンカチで抑え、
泣き始めてしまった。

俺は、どこまで近づいていいんだろう。
どこまで陶子さんに触れてもいいんだろう。
どこまでなら、陶子さんを連れ去ってもいいんだろう。

「陶子さん…」

陶子さんの正面に座っていた俺は、
静かに陶子さんの隣りに座りなおし、
そっと陶子さんの背中に手を置いた。

「っ、ごめんね…っ」
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