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妻であること、女であること(仮
第4章 私に似た女
「すみません、遅くなって。
これ、水…」

慌てて涙を拭ったけど、西谷町は泣いていたことに気付いたようで、
言葉を詰まらせた。

「ありがと。だいぶ良くなったから。
ほんと、ごめんね」

「トイレ、行きますか?」

「ううん、もう大丈夫。
でも…」

「はい」

「もう、帰ってもいいかな…」

「帰りましょう。
すぐ帰りましょう」

我儘だと思う。
わざわざ連れて来てくれたのに、帰りたいなんて。
私は夫にも言えないような我儘を、西谷君に伝えていた。
それなのに西谷君は、わけも聞かずに帰ろうと言う。
その優しさに、また少し涙が込み上げた。

私は、買って来てくれたお水をひと口飲み、
イベント会場を見ないようにしながらゆっくりと立ち上がった。

すると、西谷君は
「支えてもいいですか?」
と言いながら私の腕を掴んだ。

まだ、『いいよ』なんて言ってないのに、私を支えてくれる西谷君。
その行為を断る理由なんてなかった。

「うん、ありがとう」

私を支える西谷君の手はとても優しい。
言葉にしなくても、私を心配してくれていること、
そして1ミリも私を我儘だなんて思っていないことが、
しっかりと伝わってくる。

人は、喋らなくても思いを伝えることができる。
そのひとつの方法がセックスだ。

ちょっと喧嘩をして気まずくても、身体を重ねて抱きしめ合えば、
相手の『ごめんね』が伝わったりする。

西谷君に支えてもらったその時、
私は、そんな『伝わり』を感じたと同時に
もう何年も『伝わり』を感じていなかったことに気づいた。

悲しいな…、冷めてるんだ、私達夫婦。

本当は嫌だったんだ、私。
辛かったんだ、私。
ずっと我慢してたんだ、私。
今でもどうにかしたいと思ってるんだ、

レスのこと。
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