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蝶恋乱舞~禁断の策略愛に溺れて
第4章 素顔の信長
まだどこかあどけなさが残るその顔を見つめ、帰蝶は輿入れの日のことを思い出した。



信長は婚儀を終える夜。
いつの間にか姿を消してしまい、朝まで閨には現れなかった。
信長に帰蝶は尋ねた。

「なぜ、輿入れの日、寝所にいらっしゃらなかったのですか」
「眠れると思うか。美濃のマムシと呼ばれる男の娘など、何を考えているか分かったものではないだろ」
「分かり合うために、ともに過ごすのではないのですか」
「そう言って、俺が本当のうつけ者と分かれば殺す気だったであろう」

たしかに、噂通りのうつけなら、余計な情が湧く前にさっさと殺してしまうのもいいと思っていた。頼充の時と同じ轍を踏まないためにも。
しかし、この男は案外思慮深い。

「俺は美濃と敵対するつもりはない。波風を立てず、平穏にここで過ごすことだな。お前は俺に構わず好きに過ごせばいい。どうせ親同士の思惑だけで結んだ、形だけの夫婦なんだ」

信長は言った。

以降、今日この時まで、帰蝶はほったらかしにされてきたのだ。
今思えば信長は、二人の間に愛情が芽生えるか不安だったのだ。だからあえて、帰蝶を遠ざけてきたのだ。



だが今日、帰蝶と信長は怒りに代わるほどの激しい悲しみをぶつけ合い、一つに結ばれたのだった。

───やっと、心が通じ合った

帰蝶は微笑んで、それからも飽きずに信長の横顔を見つめていた。

なんと可愛い男。
濃いつややかなまつ毛と、凛々しい眉、触れると柔らかい頬。
帰蝶の前で初めて見せる無防備な寝顔は、まるで少年のようだった。


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