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透明な部屋
第5章 石丸琴音の部屋 5/21(水)
一度、ちょっと意地悪なことをしてしまった。
それは、デートをして、もうそろそろ帰らないといけない時間が迫った時のこと。
駅に向かって歩いていた私たち。
周りにはラブホテルなんかもあった。
鏡くんはソワソワしていた。
こういう時の鏡くんは、アレをしたいと思っている時の鏡くんだ。
鏡くんが足を止めた。
そして私を見つめる。
「琴音さん……し……してもいいかな? 琴音さんがいいなら、し……したいっていうか……」
鏡くんが誘ってくれたら、私は絶対に断らなかった。
でも、さっきも言ったように、この日はちょっと意地悪をしてしまった。
それは、鏡くんの誘いを断るというものだった。
「鏡くん。ごめんね。今日はちょっと、そんな気分じゃなくて……」
私はそう言って、鏡くんの顔を恐る恐る覗き込んだ。
鏡くんは、やっぱりがっかりした顔をしていたけど、
「わかった。じゃあ、家まで送るよ」
と言ってくれた。
自分で意地悪をしておいて、こんなことを言うのはおかしいけど、
鏡くんが「どうしてもしたい」って言って、強引に迫ってくることを、少しだけ期待していた。
でも、やっぱり鏡くんは紳士的な鏡くんのままだった。
私がイヤだと言えば、絶対にしない。
私の意思を、常に尊重してくれる鏡くん。
それは嬉しい。
でも……。
鏡くんには、もっと私のことを求めてほしかった。
たとえ、ちょっと強引に求められたとしても……。
「何が物足りないの? あんないい彼氏なのに。そんなこと言ってるんだったら、私の彼氏と取り替えてよ」
そう言ったユキは、私の残っていたおかずを勝手に取った。
「あーもう! 食べようと思ってたのに……」
「ぼーっとしてる琴音が悪いんだよ」
ユキはニヤリと笑った。
それは、デートをして、もうそろそろ帰らないといけない時間が迫った時のこと。
駅に向かって歩いていた私たち。
周りにはラブホテルなんかもあった。
鏡くんはソワソワしていた。
こういう時の鏡くんは、アレをしたいと思っている時の鏡くんだ。
鏡くんが足を止めた。
そして私を見つめる。
「琴音さん……し……してもいいかな? 琴音さんがいいなら、し……したいっていうか……」
鏡くんが誘ってくれたら、私は絶対に断らなかった。
でも、さっきも言ったように、この日はちょっと意地悪をしてしまった。
それは、鏡くんの誘いを断るというものだった。
「鏡くん。ごめんね。今日はちょっと、そんな気分じゃなくて……」
私はそう言って、鏡くんの顔を恐る恐る覗き込んだ。
鏡くんは、やっぱりがっかりした顔をしていたけど、
「わかった。じゃあ、家まで送るよ」
と言ってくれた。
自分で意地悪をしておいて、こんなことを言うのはおかしいけど、
鏡くんが「どうしてもしたい」って言って、強引に迫ってくることを、少しだけ期待していた。
でも、やっぱり鏡くんは紳士的な鏡くんのままだった。
私がイヤだと言えば、絶対にしない。
私の意思を、常に尊重してくれる鏡くん。
それは嬉しい。
でも……。
鏡くんには、もっと私のことを求めてほしかった。
たとえ、ちょっと強引に求められたとしても……。
「何が物足りないの? あんないい彼氏なのに。そんなこと言ってるんだったら、私の彼氏と取り替えてよ」
そう言ったユキは、私の残っていたおかずを勝手に取った。
「あーもう! 食べようと思ってたのに……」
「ぼーっとしてる琴音が悪いんだよ」
ユキはニヤリと笑った。

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