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第1章 ココア

スーツの上着は、すでに脱がされていて暖炉のそばで乾かしてあった。
まだ湿っている白のワイシャツに黒のスカート、眼鏡姿の私。
色気なんて一つもない。
就活生みたいな恰好をしていて…ちょっと恥ずかしくなった。
中の下着だって、こんなことになるなんて思ってもなかったからベージュだ。


「ん……」


自分で脱ごうか迷ってボタンに手をかけていると、
彼が私の太ももを左手でなぞってくる。
指先でなぞってくるため、指が思うように動かない。


「あの、ボタン外せないです…」


そう伝えたけど、彼はクスっと笑って何も答えない。
しかも、彼は器用に右手だけで自分のシャツのボタンを外した。
シャツの隙間から見える胸板はとても分厚くて男性らしい。
彼の肌が少しずつ見えてきて、胸が高まった。


「手伝ってあげる」


そう言ってモタモタしている私は上から
彼は下のボタンから外していく。
彼の手のスピードについていけなくて、自分が外そうとしていたボタンまで彼に外されてしまった。
そして、彼と目があって……頭を手で引き寄せられて、そのままキス。


“チュッ……チュッ……”


さっきは、ゆっくりとしたキスだったけど
今度はリップ音と鳴らしながら、何度も唇を重ねては離すキス。
唇が離れると寂しいが、その分、優しく唇を何度も重ねてくる。
何でか分からないけど、涙が出そうになる……。
こんな切ないキスを私は知らない。