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One Night LOVE
第2章 微糖
「……そんな思い出があるの、微糖には」


水しらずの男に、どこまで話すかは迷ったが、
彼とのキスのことは黙っておいた。
せっかくだから、キスは私と彼との思い出にしておきたいという思いがあったから。


「え……え?何?」


話終わったら、急に運転席に座っていた彼が
後部座席に座ってきたのだ。
しかも、外はどしゃぶりだから、濡れたまま隣に座ってくる。


「ちょっと、濡れてるけど……」


慌てて、バッグの中からハンカチをとろうとした瞬間
手首を握られる。
しかも、結構しっかりと強めに握られて、ドキッとした。


「ハンカチ持ってるから」


男が渡してきたハンカチは、見覚えのあるハンカチ。
あの頃の私は、刺繍が好きで、自分のハンカチにワンポイントでいれていた。
今は時間がなくてしていないけど。


「これ……」


長めの濡れた前髪をかけ分けて、彼の瞳を覗き込む。
外も薄暗いから、あまりはっきりは見えないが、あの時の少年と同じ瞳をしている。


「もしかして、あの時の、んっ」


まだ、会話の途中なのに、彼が片手で私の頭を抱えて唇を重ねてきた。
触れただけ、のあの時のキスとは違う。
しっかりと唇を重ねてきた。
苦いけど少し甘い。微糖の味がしっかりとする味のキスだ。

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