この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
イケナイアソビ。
第8章 恋して! ウェアウルフ
(十一)
「枇々木、話があるんだが……」
煮え切らない言い方は、いつもの丞らしくない。だから話の内容は宝が思っていたものと同じだと確信した。
「少し、いいか?」
いいわけがない。丞との話し合いなんて望んではいない。
そう言いたいが、おそらく、彼は一昨日の一件で自分の家を訪問したに違いない。
この件をいつまでも先延ばしにしても事態は変わらない。
宝は小さく頷くと後ずさり、玄関のドアから遠ざかった。
丞はやや控え目に玄関の敷居を跨ぐ。
「昨夜のことなんだが……。一昨日の金曜の夜、見舞いに来てくれただろう?」
宝はその問いにもやはり頷くだけだ。視線は俯けたまま、丞を見ない。いや、見られないというのが正しいだろう。たとえ彼が人間ではないと知っても、宝にとって、彼はとても眩しい存在なのだ。
「君は俺がウェアウルフだと知ったんだな……」
ぽつりと呟いたその声は、どこか悲しそうだ。
やはり、彼は正体を他言するとでも思っているらしい。
それを確かめるためにわざわざ嫌いな自分の家にやって来ただろう。
けれど宝にそんなつもりは毛頭ない。
仮に彼の正体を明かしたとして、いったい何になるというのだろう。好きな人を困らせても少しも楽しくない。
宝は丞に安心してほしくて、口を開いた。
「はい。あの、でも安心して下さい。椎名さんたちのことはけっして他言しませんから」
声は夜通し泣いたおかげでしゃがれている。
泣いている理由を詮索されるのが嫌で、だから喋らなかったのに……。
けれども腫れたこの目を見れば誰が見ても、宝が泣いていたのは一目瞭然だ。
しかし、丞は宝が泣いている理由を知らない。
自分の恋心を言わなければーー永遠に……。
丞の用件はこれで終わった。
だからまた、自分は寝室に戻り、思う存分泣くことができる。
宝は目を伏せ、やがて丞が去っていくだろうことを想像しているとーーけれど彼からは一向に帰る気配がない。
これはいったいどういうことなのか。
彼はまだ、自分に何か訊ねたい事があるのだろうか。
しばらくの沈黙が続いた中、薄い唇が開いた。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


