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イケナイアソビ。
第8章 恋して! ウェアウルフ

「看病? 抱く?」

(誰が、誰を?)

 智也の言葉がますますわからない。

 丞はまるで智也の言葉が日本語ではなく、異国語を聞いたかのように理解出来ずにいた。

「えっ? お前宝ちゃん、抱いてねぇの? いやそんな筈はねぇよな。だって今朝方宝ちゃんの家に行ったら、すんげぇそそる顔してたし? っていうかお前、昨日田牧さんに撃たれたの覚えてねぇの?」

 ーー撃たれる。

 そこで微かに思い出したのは、心配そうに自分を覗き込む宝の姿と、そして銃声だ。
 それでは自分は宝の前で変身を遂げ、そして田牧に撃たれたというのか。

 いや、そうだとすれば、智也の言葉のことも、腕に巻かれた包帯のことも辻褄つじつまが合う。

「田牧さんは俺の事を何か言っていたか?」

「いや。宝ちゃんが気絶させてくれたおかげでな、泪と口裏を合わせて昨日のことは全部夢だって事にしてる。だけどさ、宝ちゃんって普段おっとりしてるけど、ああ見えて実はけっこう凛々しいのな。田牧さんを殴って気絶させちまうとか。ーーそういう意外性もまた刺激的で可愛いんだけどさ……ってお前、ほんとに覚えてないんだな。ああ、あと安心しろ。宝ちゃん、口外はしねぇって約束してくれたぜ?」

 真面目な宝のことだ。きっとその約束は守るだろう。

 問題はそこではない。

 丞が重要視すべきなのは、自分が彼を抱いたかどうかということだ。
 もし、智也の証言が正しいなら、彼を無理矢理抱いたことになる。
 ウェアウルフという化け物の自分に、だ。

「なぜ、あいつは何も言ってこないんだ」

 こんな訳のわからない奴に抱かれたのだ。罵ってもいい筈だ。しかし、彼は何も言わないどころか、自分が目覚める前に帰っている。

「まあ、宝ちゃんだもんな。『言わない』んじゃなくて『言えねぇ』のかもな」

「それはどういう意味だ?」

 眉根を寄せ、訊ねる丞に、智也は口を歪めて笑う。

「そんなの知ってるけど誰が教えるか。自分で訊けよ」

『言わない』のではなく、『言えない』その真意はつまり、それだけ恐れているということだろうか。
 ウェアウルフという化け物の自分をーー。
 そう思い知れば胸が痛む。
 こうなることが判っていたから、宝とはあまり話をしないよう心がけていた。
 だから丞は日頃から宝を遠ざけ、極力近づかないよう過ごしていた。


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