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イケナイアソビ。
第7章 咎人-出逢い編-

「何をする、離せ!」
 酒に酔っているにしては若侍の力が強い。

「来い。本当に男なのか確かめてやろう」
 相手はそう言うと、人気のない場所へと藤次郎を引っ張る。


 しかし藤次郎は細身でありながらも腕っ節は強かった。そして相手が酔っていたというのもあって、手首を掴んできた若侍はすげなくすっ転ぶ。


「この野郎、大人しくしてればつけあがりやがって!! 俺は大身旗本の家柄だぞ?」
 言い寄ってきたのは若侍の方で、しかも転んだのもおぼつかない足取りだったのが原因である。藤次郎はただ腕を振り解いただけだ。――にも関わらず、相手は顔を真っ赤にして憤怒する。

 女のような姿をした藤次郎に負けるのがよほど悔しかったのか、男は鞘から刀を抜き、藤次郎に斬りかかってきた。
 藤次郎は強かった。若侍の腕を取ると太刀を奪った。しかしその後がいけなかった。

 何分、相手は酒に酔っている。態勢を崩した相手の二の腕を刃物が掠めた。立派な着物の肩口がすっぱりと斬れ、鮮血が滲む。

「っひぃいっ!!」
 若侍は血を見るやいなや、みっともない声を上げ、痛みを訴える。なんとも無様な奴だと藤次郎は思った。その矢先だ。

「何事だ」
 若侍の声を聞きつけた新たな人物がやって来た。


「……チッ」
 藤次郎は下唇を噛む。相手は旗本。自分で大身だと言っている。嘘とも言えるが、しかしたしかに相手の男が着ている着物は立派だ。それに、二本差しもある。自分と身分違いなのは一目瞭然だ。

 藤次郎は悪くないにしても、相手は自分の身分をいいことに藤次郎の所為にしてくるに違いない。そして新たにやって来たこの男もまた、自分の身が危ぶまれるようなことはけっしてしないだろうと、藤次郎は思った。
 

「こいつがいきなり斬りかかってきやがったんだっ!!」

 やはりとも言うべきか。自分の身分を良いことに若侍は根も葉もない嘘を連ね、藤次郎を責める。
「身よりはあるか? 名は何という?」
 新参者の男が問うてきた。

「…………」
 どうせ身分違いの自分は誰も言うことをまともに聞いてくれはしない。そう思った藤次郎は訊ねられても返事ひとつしなかった。

 それでもただやられっぱなしでは苛立つ一方だ。だから藤次郎はちょうど旗本の若侍から奪った太刀を、新参者の男目掛けて振り下ろした。


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