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イケナイアソビ。
第9章 僕はキュートな吸血鬼

「ーーっつ!」

 ……マズイ。
 マズイマズイ!
 このままじゃ、抱かれる!

 我に返った俺は先輩から逃げようとした瞬間、先輩の身体が倒れ込んできた。

 それっきり先輩は動かない。
 どうやら気絶したらしい。

 ドサッ。
 先輩の身体が地面に倒れた。


「…………はあ」

 助かった。
 安心した俺は木に寄りかかった。


 ……間一髪だ。

 こんなに性急な人間は初めてで、ちょっとびっくりだ。
 きっと勢いよく血を摂取したから催淫効果が急激に上がったんだろう。


「次からは血液を摂取する量を考えよう」
 ぼそっと呟いた。

 その時だ。
「えっ? 愛良?」
 俺と倒れている先輩を見つめる人影があった。
 それはここにはいるはずのない人。

 背が高くて、色素の薄い茶色い髪に、澄んだ茶色の目。
 俺が恋して止まないひと。
 藤間 優がーー……。

「なっ……」
 なんで、どうして優がここにいるの?
 学校、休んだんじゃないの……?
 色々な疑問が僕の頭を過ぎり、虚しく消えていく。


「唇のそれって……それに先輩の首筋……赤い液みたいなのって……血?」
 俺を指差し震える優の手。
 顔は青ざめ、まるで恐ろしいものを見るような目で俺を見つめている。


 よりによって、一番見られたくない相手に見られてしまった。

「ーーっつ!!」
 優に人間じゃないってバレた。
 先輩を呼び出し、誘惑するふしだらな奴だって思われた。
 優は俺を嫌う?
 そんなはずないよね?
 だって昨日、優は言った。
『孤独は悲しい』って……。

 だから優は、俺が孤独にならないよう、側にいてくれるんだよね?
 そうでしょう?

「ゆう……」
 目頭が熱い。涙で視界が歪む。
「あの、優……これは……」

『ちょっとしたアクシデントなんだ』
 咄嗟に過ぎった言い訳を口にして、優に手を伸ばす。
 俺の手を取ってくれることを願って……。


「近づくな!」
「ーーっつ! 待って、ゆうっ」
 だけど優は俺の手をはたき落とすと走り去って行った……。

 待って、ねぇ待ってよ、優。
 俺、優が好きなんだ。
 平気で嘘をつく奴だけどーー。
 吸血鬼で人間じゃないけれどーー。
 食事のためなら手段も択ばない汚い存在だけどーー。


 それでも俺は……。

「ゆ、う……っ」
 苦しい。
 悲しい。


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