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イケナイアソビ。
第9章 僕はキュートな吸血鬼
「ヘーキ、ヘーキ。俺だって男だし? これくらい……って、うわわっ!!」
そりゃね、俺は女子みたいな顔だし年頃の男子よりも背は低い。
だけどちゃんと男だ。
力だってあるよ!
ーーっていうところを優に見せようとした瞬間。
真ん中くらいの位置から物の見事に体勢を崩し、身体が仰け反った。
「愛良!!」
まずい。
転ける!
段ボール箱が地面に落ちたその拍子に、中に入っていたフラスコやらが割れる耳障りな音がした。
だけど、あれっ?
「あれ? 痛……くない?」
覚悟した痛みは全然やって来なくて、閉じた目をそっと開けると、そこには優の顔があった。
「えっ? 優?」
俺の腰に回っている腕は紛れもなく優のもの。
細身なのにやっぱり優は男子だ。力だって強くて、簡単に俺を包み込んでしまう。
こんなに近くに大好きな人がいる。
そう思えば、胸が高鳴る。
……優。
優の息が俺の頬を掠め、今にも触れ合いそうな唇に身体が熱くなる。
ーーだけどちょっと待って!
優が俺のすぐ側にいる。
しかもさっき、階段から落っこちた。
ーーということはつまり……。
サアア……。
血の気が引いていく。
上気した身体が冷えていく。
だって階段から転げ落ちた。
だけどどこも痛くない。ということはつまり……。
「愛良、怪我は?」
何も返事をしない俺を気遣う優。
その声はとても焦っているみたいだ。
だけど、だけど今はーー。
「平気。それよりも優だよ! 血がっ! ああ、どうしよう、怪我してるっ!!」
案の定、優は俺を庇って下敷きになったおかげで頭を打ったらしい。
こめかみから一筋、血が流れていた。
「あ……本当だ」
『本当だ』って、何を暢気なことを言っているんだろう。
ただでさえ身体が弱いのに、怪我なんかしてしまったら優がどうなってしまうのか判らない。
どうしよう。
俺の所為で優が死んでしまうかもしれない。
そう思うと、目尻に涙が溜まっていく。
「はっ、早くきゅ、救急車に!! じゃなかった。保健室にっ!!」
「俺なら平気だから。慌てないで、じゃないと愛良がまた転んでしまうから」
優は何事も無かったかのように慌てふためく俺の背中を撫でて落ち着くよう促す。

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