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イケナイアソビ。
第9章 僕はキュートな吸血鬼
「優? それ重いヤツじゃん。三階の実験室に運べばいいの? 俺が運ぶよ!」
ここは聖亜男子校。
午後一時を回った今は昼休憩。
生徒たちみんながのんびりまったり過ごす時間。
だけど日直の藤間 優だけは違う。
彼は今、一階の準備室から次の化学の授業で使うフラスコやらアルコールやらが入った大きな段ボール箱を三階の実験室へと運んでいる真っ最中だった。もちろん、俺はいつものごとく、優を手伝おうと金魚の糞よろしく後ろにくっついているわけだ。
「えっ、いいよ。愛良の体格じゃ大変だから」
「いいから、いいから」
断る優を余所に、持っていた大きめの段ボール箱を半ば強引に受け取った。
たしかに優の言うとおり、段ボール箱はズッシリ重たい。だけどこんなことでへこたれるわけにはいかない。
そんなことじゃ、優を惚れさせるのは無理だ。
なにせ俺は優好みの人間にならなくちゃいけないんだから!
まあ、俺は吸血鬼だから人間にはなれないけど、人間らしく見せることは可能だよね。
吸血鬼だっていうことは惚れさせた後で打ち明ければいいし。
優の好みのタイプについては調査済み。
優よりも背が低くて優しい子が好きなんだって。
参考までに女の子のモデル雑誌を見せたら、大きな目と、肩まである黒髪の、ちょっと気の強そうな雰囲気の子を指して答えた。
残念ながら俺は優とは同性だけど、でも大きな目と肩までの黒髪、気の強そうな雰囲気っていうのは同じ。
あとは優しい子を演じればいいんだ。
楽勝!
だけどさ、先生も先生だ。
わざわざ優が日直の時に限ってこんな重い物運びを手伝わせるんだから。
ちょっとは生徒の体調も気遣えよなっ!
「愛良、大丈夫? 平気? 俺よりも背が低いんだから無理はいけないよ?」
自分の体調そっちのけで心配してくれる優。
でもね、俺は優の体の方が心配だ。
ただでさえすぐ貧血で倒れたりするのにこんな重たい物を運んだりしたらどうなっちゃうのかって……。
俺としてはそっちの方が気になって仕方ない。
ああ、だけど優ってやっぱり格好いい。
自分の事よりも他人を気遣うことのできる、優しい人なんだ。
だからこそ、俺は優を好きになった。
こんな人間、早々いるものじゃないから。

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