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僕の愛する未亡人
第19章 社内秘 飯塚冴子②
そう言って理央が差し出した袋を受け取りながら、冴子は一瞬だけ眉を上げた。

「ん、ありがとう」

ボトルタイプの缶コーヒーを開け、ひと口含んでから、冴子は小さく息を吐いた。

「……昨日のこと、変に気にしなくていいから。でも助かった」

理央はすぐに返事をしなかった。
エンジンを切った車内に、コンビニの照明と、ビニール袋の音だけが落ちる。
冴子はいつもクールな視線を理央に向けて、冴子は微糖の缶をもう一度口に運ぶ。
甘さが舌に残るのを、今日だけは、悪くないと思いながら。

蓋を締めて、缶を脇に置くと、いきなり理央が冴子に覆いかぶさってきた。

「わ……ちょ、佐藤くん」

理央が佳織と付き合い出してから、仕事の時に彼が抱きついてくることはなかった。
それが分かっているからこそ、冴子の声は低く、冷える。

「本間さんに怒られるよ」

だが、その声とは裏腹に冴子はそっと理央のふわふわの髪を撫でた。

「どこも……痛くない? 色々されたでしょ……きっと」

「気にしなくていいってば、大丈夫だから」

そう言うが、理央の腕に力が込められる。
逃がさない、というより、確かめるような抱きしめ方だった。

「……大丈夫じゃないでしょ」

耳元で落とされる声は、仕事中のそれよりずっと幼い。

「――自分がもし、僕より力の強い男に無理やり触られたら気持ち悪いよ。セクハラの噂もそうだけど、慣れないでよ。やだ」

冴子は一瞬だけ目を伏せ、それから小さく息を吐いた。

「うん、ありがとう……ん、ん」

首筋に、理央の唇が押し当てられる。
今まで車内で冴子に抱きつく時は、彼は必ず確認してきた。
それに、こんな触れ方をしてきたことはない。

「こら……仕事中……」

顎に当たる髪のくすぐったい感触と、腹の奥に湧き上がる熱。

「昨日、寝れた……?」

首筋に何度も唇を押し当てながら、理央が尋ねてくる。

「ん、んぅ……あんま……り」

理央が背中を撫でる手にじっとりと熱がこもっているのが伝わる。

「今日……金曜日でしょ。僕、本間さんち、泊まるの。飯塚さんも来てよ」

「わ、悪いでしょ……二人でゆっくりしなさいよ」

「ん、本間さんも……昨日のこと知ったら、同じこと言うと思うけど…?」
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