この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
切り裂かれた衣
第4章 初めてのデート

映画の内容は星空をテーマにすれ違う男女の恋物語だ。衣美は物語に引き込まれながらも、隣にいる匠の存在が気になった。物語の中で登場人物達の恋愛模様が描かれ、ドキドキとさせられると隣の恋人が気にならないはずがない。
それでも映画が面白くて熱中してポップコーンのバケツに手を伸ばすと真ん中に置き、匠の手と触れそうになるたびに、ドキッとした。
映画の中盤、主人公たちが星空の下で初めて手を繋ぐシーンでも、衣美は思わず匠の横顔を盗み見た。匠はスクリーンに目を向け、真剣な表情だった。ふと、彼の手がポップコーンのバケツから離れ、膝の上でそわそわしているのに気づいた。
(もしかして……)
衣美はその震える彼の手に自分の手を伸ばしたが触れそうになったところで止めてしまった。
(…………)
勇気が出なかった。衣美は頬を赤く染めながらスクリーンに視線を戻した。
クライマックスの感動的なシーンでは、衣美は目から涙を溢した。ハンカチを取り出そうとバッグを探るが暗くて上手く見つけられない。仕方なく手で拭っていると隣からハンカチを差し出された。
「これ……」
匠が小声で言う。
「……ありがとう」
衣美は笑いながら涙を拭いた。暗闇の中でのそのやり取りが、なんだか二人だけの秘密のようで、衣美の心を温かくした。
映画が終わり、劇場を出ると、匠が少し恥ずかしそうに言った。
「……よかった、よね?」
「うん、凄く良かった。あの星空のシーン、綺麗だったね。お兄ちゃんと一緒に見れて本当に良かった」
衣美の笑顔に、匠はほっとしたように微笑んだ。
「あのさ……衣美」
「……何?」
匠は顔を赤くしながら手を差し伸べてきた。
「手……繋ご」
「………」
衣美は匠の手を見つめながらジーンと胸が熱くなるのを感じた。そして、また頬を涙が伝う。
「……うん」
衣美は差し出された匠の手を握った。大きくて固くて……それなのに優しい暖かさを感じた。
「ふふっ……」
衣美は嬉しそうに笑いながら涙を拭った。
それでも映画が面白くて熱中してポップコーンのバケツに手を伸ばすと真ん中に置き、匠の手と触れそうになるたびに、ドキッとした。
映画の中盤、主人公たちが星空の下で初めて手を繋ぐシーンでも、衣美は思わず匠の横顔を盗み見た。匠はスクリーンに目を向け、真剣な表情だった。ふと、彼の手がポップコーンのバケツから離れ、膝の上でそわそわしているのに気づいた。
(もしかして……)
衣美はその震える彼の手に自分の手を伸ばしたが触れそうになったところで止めてしまった。
(…………)
勇気が出なかった。衣美は頬を赤く染めながらスクリーンに視線を戻した。
クライマックスの感動的なシーンでは、衣美は目から涙を溢した。ハンカチを取り出そうとバッグを探るが暗くて上手く見つけられない。仕方なく手で拭っていると隣からハンカチを差し出された。
「これ……」
匠が小声で言う。
「……ありがとう」
衣美は笑いながら涙を拭いた。暗闇の中でのそのやり取りが、なんだか二人だけの秘密のようで、衣美の心を温かくした。
映画が終わり、劇場を出ると、匠が少し恥ずかしそうに言った。
「……よかった、よね?」
「うん、凄く良かった。あの星空のシーン、綺麗だったね。お兄ちゃんと一緒に見れて本当に良かった」
衣美の笑顔に、匠はほっとしたように微笑んだ。
「あのさ……衣美」
「……何?」
匠は顔を赤くしながら手を差し伸べてきた。
「手……繋ご」
「………」
衣美は匠の手を見つめながらジーンと胸が熱くなるのを感じた。そして、また頬を涙が伝う。
「……うん」
衣美は差し出された匠の手を握った。大きくて固くて……それなのに優しい暖かさを感じた。
「ふふっ……」
衣美は嬉しそうに笑いながら涙を拭った。

