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燃えて、おぼれて、尽き果てるまで ~白く滲んだスターマイン~
第2章 早春のボート ~善福寺公園~

◆第2章
遼一と悦子が20年の時を超えて男と女の関係になることにそれほどの時間は要さなかった。
「せっかくいいお天気だから井之頭公園にでも行きましょうか?」
遼一の提案に悦子はしばらく考えてから
「誰か知っている人に会うと困るから…」
と躊躇の表情を見せた。
小売業の会社に勤めている遼一は平日に休みが取れるので恵比寿の病院で再会してからちょうど2週間後の水曜日に、近くまで営業の用があるからという口実を設けて悦子を訪ねたのだが、その家は武蔵境の住宅地にあり、そこから近い井之頭公園は知り合いに会う危険が高い場所である。
「ほんとうは今日お休みなんでしょ?」
「あ、バレてました?」
吉祥寺に近い井之頭公園とは反対側の、駅からは少し離れた善福寺公園に歩きながら悦子が悪戯っぽい眼を向けてスーツ姿の遼一に問い、笑った。
「わかってたわよ」
「はい、休みです、ほんとうは」
遼一は素直に白状した。
「早くお誘いこないかな、ってずっと思ってたの」
悦子は遼一の顔を見ずにそういうと、いきなり彼の左手を右手で握った。
遼一はほんの一瞬驚いたが、予期していなかった嬉しさがすぐにそれを払いのけてくれ、指と指をしっかりと組み合わせてきつく握り返してから悦子を見返すと、彼女は小さくウィンクしたその眼で甘えるように微笑んだ。
それはふたりの間の大きな秘密の始まりだった。
遼一と悦子が20年の時を超えて男と女の関係になることにそれほどの時間は要さなかった。
「せっかくいいお天気だから井之頭公園にでも行きましょうか?」
遼一の提案に悦子はしばらく考えてから
「誰か知っている人に会うと困るから…」
と躊躇の表情を見せた。
小売業の会社に勤めている遼一は平日に休みが取れるので恵比寿の病院で再会してからちょうど2週間後の水曜日に、近くまで営業の用があるからという口実を設けて悦子を訪ねたのだが、その家は武蔵境の住宅地にあり、そこから近い井之頭公園は知り合いに会う危険が高い場所である。
「ほんとうは今日お休みなんでしょ?」
「あ、バレてました?」
吉祥寺に近い井之頭公園とは反対側の、駅からは少し離れた善福寺公園に歩きながら悦子が悪戯っぽい眼を向けてスーツ姿の遼一に問い、笑った。
「わかってたわよ」
「はい、休みです、ほんとうは」
遼一は素直に白状した。
「早くお誘いこないかな、ってずっと思ってたの」
悦子は遼一の顔を見ずにそういうと、いきなり彼の左手を右手で握った。
遼一はほんの一瞬驚いたが、予期していなかった嬉しさがすぐにそれを払いのけてくれ、指と指をしっかりと組み合わせてきつく握り返してから悦子を見返すと、彼女は小さくウィンクしたその眼で甘えるように微笑んだ。
それはふたりの間の大きな秘密の始まりだった。

