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燃えて、おぼれて、尽き果てるまで ~白く滲んだスターマイン~
第1章 再会 ~東恵比寿の病院~

「今度また連絡してもいいですか」
少し上ずった声で遼一は訊ねた。
「いいわよ、もちろん」
「メルアド教えてもらえますか」
「LINEでもいいかしら」
ほんとうは遼一もLINEを知りたかったところ、いきなりには遠慮があったのでメルアドと言ったのだが、悦子は何の抵抗もなくLINE交換に応じてくれた。
「着信音をOFFにしているから、返信遅くなったらごめんなさい」
そう言ってから、「夜遅くでもいいわよ」と再び少し上目遣いで付け加えた。
「ここからどうやって帰るんですか」
遼一が訊ねた。
「駅までバスよ」
患者の多いこの病院から駅までのバスは20分おきに出ていた。
「じゃあ、ぼく送りますよ。車で来てるから」
そう言うと、遼一は悦子の返事を待たず送ることを決めたように伝票をつまんで先に席を立った。
「ごめんね、時間大丈夫なの?」
「大丈夫です、送らせてください」
少しでも長く遼一は悦子との時間を維持していたかった。
パーキングへ急ぎ、コイン精算を済ませると、車寄せで待つ悦子の横へ静かにプリウスを滑り込ませ、助手席ドアを内側から開けた。
「ありがとう、ごめんね」
再び悦子がそう言いながら、淡いグリーンのフレアスカートの裾を持ち上げて樹主席シートに身体を預けたとき、光沢のあるストッキングに包まれた膝から下の均整のとれた美しいふくらはぎと細い足首が遼一の胸を揺さぶり、ハンドルを持つ手が少しだけ震えたのは気のせいではなかった。
駅で悦子を降ろすまでのわずかな時間にどんな会話をしたかをあとであまり思い返せないほど遼一はその日一日うわの空の時を過ごし、別れ際に眼にした悦子のすらりと輝く脚とそのしっとりとした所作がちらついてなかなか眠りにつくことができなかった。

