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燃えて、おぼれて、尽き果てるまで ~白く滲んだスターマイン~
第1章 再会 ~東恵比寿の病院~

「よかったらちょっとだけお茶でもどうですか?」
胸のときめきをかろうじて抑えながら遼一が言うと
「いいわよ、急がないから。それにお話したいこともいっぱいあるから」
と悦子はためらいもなくそう応えた。
高校卒業10年の同窓会には遼一は海外赴任中のため参加できず、悦子に会うのはほんとうに彼女の学年の卒業式以来であったが、髪型は歳相応に変わっているものの面影は当時のままで、1分と経たないうちに昔の印象に戻っていた。
病院にはエントランスの脇に患者向けのちょっとしたレストランと売店が備わっていて、ふたりはそこで少し落ち着きを取り戻し、通りに面したカウンター席でお互いの20年近い昔からの経過を知らせ合うこととなった。
遼一には社内結婚した妻と2人の子供がいるごくありふれた家庭で、かなり名の知れた小売業の会社の課長職となっていた。
そして悦子は来宮と結婚後も数年勤めた法務事務所を辞めてから、今はパート勤めだと言ったが子供には恵まれないのだとも話してくれた表情に翳りがあることを感じた遼一はそのわけをすぐあとで知ることとなる。

