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燃えて、おぼれて、尽き果てるまで ~白く滲んだスターマイン~
第5章 白く滲んだスターマイン ~熱海の花火の夜~ -完-

 一時期危ぶまれた閑散期から復活を遂げた金曜日の熱海の街は、花火大会のせいもあって駅前から続くアーケード商店街も多くの人でごった返していた。

「すごいわね」
「知ってる人に会わなければいいね」

 そんな会話をしながら、ふたりは土産物店を覗いてまわり、夜の軽いつまみだけを買うと坂道を下った。

 タクシーを呼ぶこともできたが、ふたりとも熱海の街の中を並んで歩きたかった。
 もしかするとこれがほんとうに最後かもしれないという不安が、日常から少しだけ離れたそぞろ歩きを選ばせていたのだが、平日はそれほどでもない海沿いの遊歩道にも花火見物に向かう客が多く、さすがに手をつなぐことができずにいた。
 夕刻の近づく熱海をふたりで歩いているところを知っている者に見られただけで、疑いから逃れる余地がないことはふたりとももちろんわかっていたが、それは話題から避けていた。
 
 なんとなく人の流れに乗りながら20分ほどの遊歩道歩きのあと、そこに面して建つホテルに着いた。
 
 チェックインを済ませて小さなエレベータに乗り込むと、ようやくふたりになれた安心感から悦子が黙ったままキスをしてきたが、その吐息が乱れているのを恭一はいじらしいほど感じて髪をやさしく撫でていた。
 部屋に入ってからも、今日の意味をわかっての緊張感からか、ふたりともいつものようにすぐに抱き合うことはなかった。

「すごい! 露天風呂があるのね!」

 悦子が嬉しそうに声を上げた。

「そうだよ、そこから花火見えるかも」
「ほんと?」
「でもガラリが邪魔かな」

 7月末の蒸し暑い日である。

 汗をかいたから先にシャワーでも、と言う遼一に悦子もすぐにうなずき、早速丸い大きな陶器製の露天風呂に「ふたりだと狭いかしら」と言いながらお湯を張り始め、かすかな鼻歌を歌とともに脱衣所へ姿を隠したのを見て、遼一もシャツのボタンを外した。
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