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燃えて、おぼれて、尽き果てるまで ~白く滲んだスターマイン~
第5章 白く滲んだスターマイン ~熱海の花火の夜~ -完-

 遅い梅雨の明けきらない7月の最後の金曜日、ふたりは東京駅のホームで東海道線の電車を待っていた。
 熱海なら多くの人が新幹線で向かうが、遼一は悦子と過ごす電車の中の時間を楽しみたかったので敢えて在来線の2階建てグリーン車を選んだのである。

 金曜日の開催は知らない人も多く、平日の昼間ということもあって熱海行きの電車は比較的空いており、2階席はそれなりに埋まっていたが、1階席は幸運にも東京駅で空いた山側最後部の席に座ることができた。
 そこなら気兼ねなくシートを倒すことができるうえ、うしろからの視線を気にすることなく2時間弱の悦子との時間を楽しむことができた。

 鎌倉への乗り換えがある大船を過ぎると眺めの良い2階に比べて1階の車両にはほとんど人がいなくなった。

「空いてるわね」
「一応平日だし」
「お部屋から花火が見えるの?」
「そのはずだよ」
「じゃあお部屋から見るの?」
「ふたりだけで見たい…」
「うれしい」

 そう言うと両方の腕を遼一の右手に絡ませて悦子は頭を彼の肩に置いた。
 左手でその頭をそっと抱えた遼一は、周囲をさっと見渡してから顎を持ち上げてキスをし、絡められた右手をスカートに伸ばした。
 そのスカートは恵比寿の病院で初めて再会したときに悦子が着けていたものだった。
季節は進んでいたが、彼女はその思い出のスカートを今日も着て来ることにしたのである。
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