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燃えて、おぼれて、尽き果てるまで ~白く滲んだスターマイン~
第5章 白く滲んだスターマイン ~熱海の花火の夜~ -完-
第5章

 毎週のように逢瀬を重ねていたふたりだったが、少し伸びていた夫の退院が7月末と決まり、これからどうすればいいか考えがまとまらずにいた悦子だったが、決断は思いもよらないところから迫られることとなった。
 
 初めて再会してからもうすぐ2か月という7月に入ったある夜届いた遼一のLINEで、彼が再びシンガポール勤務になったことを告げられたのである。
 一旦8月に出張で引き継ぎなどの下準備を行なったあと、9月から正式着任ということだった。

 前任者の事情で、経験者の遼一に白羽の矢が立ち、急遽赴くことを断れる理由がなかった、と彼は言い、短いコメントの端々に無念さが添えられていたが、悦子も夫の退院後のことを相談しようとしていた矢先だったので、その日は長いLINEを交わすことになったが、ひとまずはこの2か月あまりのかけがえのなかったふたりの時を7月末に思い出のファイルに残そうと決めたのである。

 そしてその日は泊りがけで熱海の花火を見ようということでふたりは約束を交わした。
〝初めてのお泊りね〟
と悦子は喜んだが、〝最初で最後かな〟と返信しかけてから、何も悲しませることはないと遼一は思いとどまった。
 できることなら最後にはしたくなかったのである。

 悦子と離れることは耐えられそうになかった。
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