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燃えて、おぼれて、尽き果てるまで ~白く滲んだスターマイン~
第4章 秘密の会話 ~深夜のLINE~

悦子のシフトの休みと遼一の休みが合った次の週の水曜日の朝、ふたりは麻布十番で落ち合い、商店街の中ほどにある昔ながらの喫茶店で2週間ぶりに顔を合わせた。
ふたりにとってこの2週間は2年にも感じられるほど待ち遠しかった。
クラシックが流れるレトロな雰囲気を醸しているその店の落ち着きは、平日の朝の都心の空気とはかけ離れたような空間を提供してくれている。
「やっと会えたわね」
「長かったね」
悦子は前日の仕事帰りに美容院で髪を整え、ローズピンクのワンピースで現れた。
ワンピースが好きだと恭一が言ったのを覚えていたからである。
「すごく似合うね」
「ありがとう」
素直に悦子は喜び、選んできてよかったと思いながら、脱がされる時のことを想像して期待に体が熱くなっていた。
運ばれてきたコーヒーをひと口だけ飲むと、遼一は煙草に火をつけた。
「煙草やめてないの?」
「うん、酒はやめられても煙草はやめられないんだ」
遠くを見るような眼でゆっくりと煙を吐く遼一の姿が悦子は昔から好きだった。
遼一は遼一で、珍しく両肘をテーブルにつき組み合わせた手の上に顎をのせて自分を眺めている悦子の表情が可愛くてたまらなく、少しだけ唇をとがらせて「だ・い・す・き」と声に出さずに言うと、悦子がそのままの姿勢でキスをする真似をし、ウィンクした眼が、早くふたりになりたい、と言っているのが遼一にもよくわかった。
「これからどこへ行くの?」
「どこも行かない。ふたりでストレッチするの」
何それ、といった表情で悦子が笑ったが、麻布十番の交差点近くにあるホテルのデイユースを遼一は予約してあった。
「ストレッチするの? ふたりで?」
「そう。ストレッチと柔軟体操」
なんとなく意味をとらえた悦子が恥ずかしそうに笑い、つられて遼一も微笑んだ。

