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独りの部屋
第7章 浴衣ごしのぬくもり
浴衣の紐を結び直しながら、鏡越しに彼を見た。
淡い藍の柄が、湯上がりの肌にふわりと寄り添っている。

「……似合ってる」
後ろから近づいた彼が、帯のあたりで手を止めた。
そのまま、そっと抱きしめられる。
ぬくもりが、背中にじんわりと沁みていく。

「さっきまで、あんなに熱かったのに」
囁きは、首筋に落ちた唇とともに震えた。
肌に触れていないはずなのに、浴衣ごしの感覚が、妙に敏感だった。

帯の結び目が、ほどける。
音も立てずにするりと、布が緩んでいく。

「やっぱり、こっちのほうがきれいだ」
浴衣の隙間から滑り込む彼の手が、私の胸元を撫でる。
指先が、湯にほどけた身体を、もう一度目覚めさせていく。

「ここ、また熱くなってる」
彼の舌が、耳の裏に触れた。
そこから火がついたように、身体の奥がじわじわ疼き出す。

ふたりして倒れ込んだ畳に、浴衣が広がる。
月明かりだけが照らす室内で、重なった体温は離れない。

浴衣越しの、やさしい夜。
それはいつの間にか、言葉も超えて、ただ触れあうだけの熱になっていた――。

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