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独りの部屋
第20章 潮騒の指先

蒼い海が、光の粒をはじくように揺れていた。
岩場の陰、視線の届かない入り江で、わたしは彼女の指に触れられていた。
あたし――佐伯優子、三十歳。
男も女も経験がなくて、この歳までひとりで生きてきた。
けれど今、上司の沢村さんに、どうしようもなく乱されている。
「ここ、気持ちいい?…ほら、優しくしてるでしょ」
彼女の指は、さっきからずっとわたしの脚のあいだにいる。
水着の中、こっそり忍ばせた小さな道具が、わたしの奥で甘い痺れを広げている。
ざらりとした岩肌の冷たさが背中にあるのに、
下半身だけが熱くて、ひとりで火照っているみたいだった。
「初めてだから、ちゃんと見ててあげる」
沢村さんの瞳は焦がすようにまっすぐで、
わたしはその視線から目を逸らせない。
右手でわたしを抱き寄せながら、左手で道具をゆっくり押しあてるたび、
深いところから水音が、くちゅ…と鳴いた。
「ねぇ、優子さん。ちゃんと気持ちよくなるって、こういうことなのよ」
彼女の指と道具の律動は、波音と重なってゆく。
潮の香り、唇に落ちるキス、耳を這う舌先――
すべてが混ざり合い、言葉にならない熱が膨らんで、
わたしは声を殺しながら、身体を彼女に委ねていた。
恋じゃない。けれどそれ以上の、
知らなかった自分に出会う、そんな夜だった。
完
岩場の陰、視線の届かない入り江で、わたしは彼女の指に触れられていた。
あたし――佐伯優子、三十歳。
男も女も経験がなくて、この歳までひとりで生きてきた。
けれど今、上司の沢村さんに、どうしようもなく乱されている。
「ここ、気持ちいい?…ほら、優しくしてるでしょ」
彼女の指は、さっきからずっとわたしの脚のあいだにいる。
水着の中、こっそり忍ばせた小さな道具が、わたしの奥で甘い痺れを広げている。
ざらりとした岩肌の冷たさが背中にあるのに、
下半身だけが熱くて、ひとりで火照っているみたいだった。
「初めてだから、ちゃんと見ててあげる」
沢村さんの瞳は焦がすようにまっすぐで、
わたしはその視線から目を逸らせない。
右手でわたしを抱き寄せながら、左手で道具をゆっくり押しあてるたび、
深いところから水音が、くちゅ…と鳴いた。
「ねぇ、優子さん。ちゃんと気持ちよくなるって、こういうことなのよ」
彼女の指と道具の律動は、波音と重なってゆく。
潮の香り、唇に落ちるキス、耳を這う舌先――
すべてが混ざり合い、言葉にならない熱が膨らんで、
わたしは声を殺しながら、身体を彼女に委ねていた。
恋じゃない。けれどそれ以上の、
知らなかった自分に出会う、そんな夜だった。
完

