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独りの部屋
第19章 潮風と秘密
波の音が遠くでざわめき、潮風が肌を撫でる。
砂に半ば埋もれた薄いタオルの上で、彼女はそっと小さな道具を取り出した。
冷たく硬いその感触が、手のひらの温もりでじわりと和らいでいく。

「こっそり、誰にも聞こえないから」
彼女の囁きに、胸の奥が熱く波打った。
指先がわたしの脚を辿り、やがて道具をそっと当てる。
砂粒が背中にくっつき、塩の香りが混じった空気が濃く充満する。

細やかな振動がじわじわと広がり、まるで潮の満ち引きのように身体を満たしていく。
波のリズムと重なって、心も体も溶けてゆく感覚。
彼女の吐息が耳元で震え、温かな舌が首筋を這う。

「もっと、感じて」
砂のざらつきと潮風の冷たさ。
それらが絡み合いながら、あらゆる感覚が研ぎ澄まされる。
彼女の手と道具が奏でる秘密の調べに、わたしは静かに身をゆだねていった。

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