この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
独りの部屋
第11章 【秘密ごっこ】

「ねえ、今だけ“恋人ごっこ”しない?」
そう言ったのは、夏休みの最後の日だった。
私は笑ってうなずいたけど、彼女の目はまっすぐで――
冗談には見えなかった。
ふたりきりの部屋、カーテンを閉め切って、午後の光を遮った。
外では蝉が鳴いていたけれど、ここは、世界から切り離されたように静かだった。
「キス、していい?」
彼女の声は震えていた。
私は頷くだけで、唇を差し出す。
やわらかく、でも熱のこもった口づけ。
くちびるを離してからも、彼女の指が私の髪を撫で、頬をたどり、首筋へと降りていく。
「こういうの、ごっこじゃなくなるかも」
囁きながら、私のシャツのボタンをひとつずつ外していく。
胸元がひらくたび、空気が肌に触れて、ざわりと鳥肌が立った。
彼女の手が、そっと胸にふれる。
指先で撫でるたびに、奥のほうで甘い痛みがひらいていく。
「声、出しちゃだめ」
彼女が私の耳元でそうささやいて、舌でそこをやさしく責める。
ベッドのシーツがしわくちゃになっていく。
私の脚のあいだに忍びこんだ彼女の手が、熱を探るように動いて――
思わず唇を噛みしめた。
「この“ごっこ”、ずっと続けたいな」
彼女の頬にかかる髪が濡れていた。
私は何も言えず、ただ、彼女の背を抱きしめた。
秘密は、いつだって甘くて、少しだけ苦い。
でもそれでもいい。
この夏の終わりが、ふたりだけの“はじまり”になりますように――。
完
そう言ったのは、夏休みの最後の日だった。
私は笑ってうなずいたけど、彼女の目はまっすぐで――
冗談には見えなかった。
ふたりきりの部屋、カーテンを閉め切って、午後の光を遮った。
外では蝉が鳴いていたけれど、ここは、世界から切り離されたように静かだった。
「キス、していい?」
彼女の声は震えていた。
私は頷くだけで、唇を差し出す。
やわらかく、でも熱のこもった口づけ。
くちびるを離してからも、彼女の指が私の髪を撫で、頬をたどり、首筋へと降りていく。
「こういうの、ごっこじゃなくなるかも」
囁きながら、私のシャツのボタンをひとつずつ外していく。
胸元がひらくたび、空気が肌に触れて、ざわりと鳥肌が立った。
彼女の手が、そっと胸にふれる。
指先で撫でるたびに、奥のほうで甘い痛みがひらいていく。
「声、出しちゃだめ」
彼女が私の耳元でそうささやいて、舌でそこをやさしく責める。
ベッドのシーツがしわくちゃになっていく。
私の脚のあいだに忍びこんだ彼女の手が、熱を探るように動いて――
思わず唇を噛みしめた。
「この“ごっこ”、ずっと続けたいな」
彼女の頬にかかる髪が濡れていた。
私は何も言えず、ただ、彼女の背を抱きしめた。
秘密は、いつだって甘くて、少しだけ苦い。
でもそれでもいい。
この夏の終わりが、ふたりだけの“はじまり”になりますように――。
完

