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わたしのお散歩日記
第4章 美しいランナー
 『キミ、かわいいよね』
 『え…、あ、ありがとうございます』
 『はい、アーン』

 先輩がスプーンでアイスクリームをすくってわたしに食べさせてくれた。あのときは天にも昇る気持ちってこういう感じ? って思ったっけ。先輩とのファーストキスはアイスクリームの味。甘くておいしい先輩の唾液…。

 あの人、コースからそれてわたしが座っているベンチに来て一休みしないかな。わたしの勝手な妄想。
 
 『隣、いいかしら。いつもお会いするわね』
 『どうぞどうぞ、お休みしてください。空いてますから』

 『空いてます』なんて間の抜けたことを言いながら、わたしはどきまぎしてベンチの端に寄る。

 『これ、よかったらどうぞ。暑いですから』

 わたしはポシェットから塩飴を取り出す。

 『ありがとう。あなた、かわいいわね。塩分も大事だけど水分も補給したいわ』

 そう言ってあの人はわたしに唇を重ねてくる。清楚な雰囲気とうって変わった淫猥なキス。舌と舌…ベロとベロを絡め合うような。

 『あなたの唾液、甘くておいしい…。よかったらウチに遊びに来ない? シャワーを浴びてビールでも飲みましょうよ』
 『えっ、本当ですか? わたしビール大好きです』
 『うれしいわ。わたしのからだ、ビールでできているから』

 …なんて。いい歳をしてそんな妄想をしてしまった。朝の天気予報で『今日はことし一番の暑さになるでしょう』って言ってたっけ。あの人がもうカーブの向こうから姿を現わした。
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