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午後四時までの性隷
第8章 動き出した歯車
榎木さんが近くを走っている…。

しかも午後まで時間がある…。

それまで他愛のないやり取りだったことで、榎木さんを私は信頼し始めていました。

「◯◯街道のどの辺りなのですか?」

「女性なのに道に詳しいのですか?◯◯街道のK市付近を走行中ですよ」

私の住んでいる隣の市です。

近くに榎木さんがいる…。

「実は私、今、榎木さんがいる場所からそんなに遠くないところに住んでいます」

言うべきか言わないでおくべきか一瞬迷ったのですが、こんな偶然はないと思い、ついメッセージを送ってしまいました。

「そうなんですか!じゃあ僕もちょっと勇気を出しちゃおうかな。アイさん、ドライブとランチだけでもご一緒しませんか?午後は僕も予定があるのでそんなに時間は取れませんが。もちろんご自宅に伺うようなことはしないので安心してください。僕はフリーで動けるので、ご指定いただいた場所へお迎えにあがります」

私の方から誘ったも同然なのに、返信の手が、指が動きません。

一度会ってみたいという気持ちは日に日に高まっていましたが、最初が車という密室というのは怖いです。

どこに連れて行かれるかわかりません。

私はあんなメッセージを送ったことを後悔し始めていました。
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