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誰にも言えない回顧録
第3章 28歳 大学職員~続編
足元に飛んでいった紙。
取り押さえようとして間に合わずに慌てる私に気付いたその人は、屈み込んでそれを丁寧に両手で拾い上げ、すっと手渡してくれた。
その間紙面には決して視線を向けない。
自然な微笑が妙に安心感を与えてくれた。
とっさに言葉が出ず、まごついている私を見てその微笑はさらに柔和なものになった。
どうぞ
優しい声に我に返る。
気の利いた言葉も口にできずに反射的に何度か頭を下げ、結局黙ってその紙を受け取った。
ジャケット姿のその男性は、見たところ30代後半くらい。
いかにも仕事が出来そうな人、という雰囲気だった。
テーブルの上にはノートパソコンと資料のような分厚い冊子。
見覚えなどなかったけれど、この人もよく来ている人なのだろうか。
何事もなかったように画面に視線を戻し、仕掛りの作業に集中し始めた様子を横目に見ながら、私は「少しでも話したかった」と思う自分に驚いていた。
男の人とのコミュニケーションなど私の日常にはまず無いものだったからだ。
それが。
この人だったら、ひょっとしたら自分の抱えている疑問に答えてくれるのではないか。
そう感じたのだ。
様子を窺う視線を察したのか、男性が私のほうに振り向いた。
何か..難しい書き物でもしようとしてます?
察しのいい人。
そう水を向けてくれたことで私は舞い上がり、緊張しつつも勇気を振り絞って答えた。
就活をしていること。
周囲に相談できる相手がいなくて困っていること。
志望も何も、どうすればよいのか見当もつかず途方に暮れていること。
結果履歴書を書く練習ですらこうして一人で苦戦していること。
他のお客の迷惑にならないよう静かに、でも一気にまくし立てていた。
男性はひとしきり聞き終えると、自分の名刺を取り出し私に差し出した。
IT系の会社でSE兼営業のような仕事をしているんです
目指す方向は違うかもしれないけれど、お手伝いできることならしますよ
今サボり中で時間もありますから
いたずらっぽくそう言ってくれた。
望外の喜びだった。
私は男性が促してくれるのに甘え、いつの間にか次々質問を重ねていた。
誰かに聞いてみたい、不安に思っていたことがたくさんあったのだ。
それだけではなかった。
胸につかえていたもやもやを吐き出し、受け止めてもらえる喜びそのものに有頂天になっていた。
取り押さえようとして間に合わずに慌てる私に気付いたその人は、屈み込んでそれを丁寧に両手で拾い上げ、すっと手渡してくれた。
その間紙面には決して視線を向けない。
自然な微笑が妙に安心感を与えてくれた。
とっさに言葉が出ず、まごついている私を見てその微笑はさらに柔和なものになった。
どうぞ
優しい声に我に返る。
気の利いた言葉も口にできずに反射的に何度か頭を下げ、結局黙ってその紙を受け取った。
ジャケット姿のその男性は、見たところ30代後半くらい。
いかにも仕事が出来そうな人、という雰囲気だった。
テーブルの上にはノートパソコンと資料のような分厚い冊子。
見覚えなどなかったけれど、この人もよく来ている人なのだろうか。
何事もなかったように画面に視線を戻し、仕掛りの作業に集中し始めた様子を横目に見ながら、私は「少しでも話したかった」と思う自分に驚いていた。
男の人とのコミュニケーションなど私の日常にはまず無いものだったからだ。
それが。
この人だったら、ひょっとしたら自分の抱えている疑問に答えてくれるのではないか。
そう感じたのだ。
様子を窺う視線を察したのか、男性が私のほうに振り向いた。
何か..難しい書き物でもしようとしてます?
察しのいい人。
そう水を向けてくれたことで私は舞い上がり、緊張しつつも勇気を振り絞って答えた。
就活をしていること。
周囲に相談できる相手がいなくて困っていること。
志望も何も、どうすればよいのか見当もつかず途方に暮れていること。
結果履歴書を書く練習ですらこうして一人で苦戦していること。
他のお客の迷惑にならないよう静かに、でも一気にまくし立てていた。
男性はひとしきり聞き終えると、自分の名刺を取り出し私に差し出した。
IT系の会社でSE兼営業のような仕事をしているんです
目指す方向は違うかもしれないけれど、お手伝いできることならしますよ
今サボり中で時間もありますから
いたずらっぽくそう言ってくれた。
望外の喜びだった。
私は男性が促してくれるのに甘え、いつの間にか次々質問を重ねていた。
誰かに聞いてみたい、不安に思っていたことがたくさんあったのだ。
それだけではなかった。
胸につかえていたもやもやを吐き出し、受け止めてもらえる喜びそのものに有頂天になっていた。

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