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誰にも言えない回顧録
第3章 28歳 大学職員~続編
彼は私の考え方についていろいろ聞き出そうとしてくれたが、個人情報に触れることには一切言及しようとしなかった。

名前を聞かれない。
大学名すら知ろうとしない。

この場かぎりのこと、とされてしまうのだろうか。
話しながら不安に駆られるほど、私はこの対話に夢中になっていた。

勇気を出して、自分から連絡先の交換を申し出た。
男性恐怖症の自分が進んでそんなことを口にするなんて。
我ながら驚くべき出来事だった。
彼は
中年期に差し掛かった自分が若い女の子と繋がるのって怪しいでしょう
と苦笑しながらしばらく躊躇っていたが、就活のアドバイスということでなら、と応じてくれた。

だから連絡を入れるのはいつも私からだった。
本当は出来ることなら頻繁に会いたいのに、迷惑がられるのを恐れ遠慮がちな頻度で。
忙しいはずなのに、彼はそれでもお願いすれば具体的に日時を決めて時間を割いてくれた。

図々しく甘えているくせに時折申し訳なさを口にしたりもしてしまう。
すると彼は決まって
僕みたいなおじさんが仕事を離れて若い女の子とお話しする機会なんて本来あり得ないですから
とジョークめかして一笑に付してくれていた。

数回は出会ったカフェで待ち合わせたけれど、周囲が憚られる。
どちらからともなく話しやすい場所に変えたほうが、という話になった。

もし嫌でなければカラオケボックスがいいかもしれませんね
提案に異論はなかった。
初めて二人きりで個室に入った時にはいくらか緊張もしたけれど、彼はカフェで過ごす時とまったく変わらなかった。
男慣れしていない私を尊重してくれていた。
あえて常に一定の距離を置いて座ろうとする心遣い。
警戒心を感じる必要もなかった。

一問一答をひたすら繰り返し、心得が身についていく。
面接のアポが取れれば、疑似面接で練習させてくれた。
そのおかげで。
ついにインターンまで漕ぎ着けた先が出てきた。

喜んで彼に一報を入れ、あらためて顔を合わせて報告させてほしいと伝えた上で。
恥ずかしながら本当にその時に至って初めて、私は気がついた。

さんざん甘えてきたくせに。
ここまできてようやく感謝を伝えようとしているのに。
私からどうやってお礼をすればよいのか...

待合せの連絡が来て私はさらに恐縮した。
お祝いをしましょう、と指定された場所は私には敷居の高そうなレストランだった。
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