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わたしの昼下がり
第37章 PTAの会合
 そう思ったとき、〇本さんが小声で囁いてきた。

 「奥さま、何かお仕事なさってます?」
 「え? いえ、わたしは何も…」
 「わたしもなんです。ちょっと思ったんですけど、今年、役員をしてしまえば来年は優先的に免除されるっていうでしょ?」

 確かに、そんな不文律のようなものがあると聞いたことがある。

 「だから、手を挙げちゃおうかなって思ったのですけど、よろしければ奥さまもご一緒にいかがですか?」

 事情はわたしも〇本さんと同じだが、気まずい雰囲気もあと少し我慢すれば今年も役員にならずに済む。手を挙げるなら、わたしなど巻き込まずに挙げてくれればと思ったが、井戸端会議で、PTAの役員などというものは、結局、先生に頼み込まれた専業主婦の母親が引き受けるしかない、といった話を聞いたことがある。そうは言っても、即答するほど肝が据わってもいないわたし。

 「そうですね…」

 ちょっと間合いを取れば”一分間”は過ぎるだろうと思ったとき、〇本さんが手を挙げた。

 「わたしたちやってもいいですよ」

 (わたし、たち…?)

 気が付いたら〇本さんとともにわたしも役員になっていた。

 「よろしくお願いしますね。お仲間がいると思ったら、なんだか気が大きくなっちゃって。もしかしてご迷惑でしたかしら?」

 会合が終わり、役員になった母親たちが残って学校から役員の仕事のことなどを聞いた後、〇本さんが笑いながら話しかけてくる。

 
 「いえ、迷惑などということは…」

 否定はしたものの、正直に言えばまだ戸惑ってもいる。

 「よかった。一日中、団地にいてもクサクサするばかりで。わかっていただけますか?」

 その気持ちはよくわかる。

 「団地にお住まいなんですか? わたし、〇号棟です」

 ある日、団地に△井が訪ねてきて、気が付いたらそういう関係になっていたことを思い出す。わたしは運がよかったということだろうか。


 「まあ、そうなんですね。うちは△号棟で」

 同じ団地でも、少し離れるともはやお互い面識もないのだと思う。
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