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わたしの昼下がり
第39章 連れ込み旅館で(2)
「お隣の旦那にはいたく親しみが湧きましたよ。向こうも『奥さん、奥さん』って言ってね。ほとんど同時だったんじゃないですか?」
△井が言っている意味がわからないような、わかるような。
「なんというか、二重奏とでも言えばいいんですかね」
「二重奏…」
「そう。向こうもこちらも良妻賢母。良妻賢母の二重奏」
△井は、ここに来ると『良妻賢母』という言葉を使います。連れ込み旅館といちばん縁遠い言葉と知っていてのことでしょうけど。
「やっぱりここはいい。奥さんも気兼ねなく鳴いてくださる」
(鳴く…)
△井が『奥さん』と呼ぶのはいつものことですが、わたしも何か壁の向こうと呼応して『鳴いて』いたのでしょうか。
(そう言えば…)
記憶が徐々に戻ってきます。アクメに達しようとしているお隣さんの声が聞こえたとき、わたしもいよいよ強い快感がからだを走って耐えきれなくなり…。
「お隣に”親しみが湧いた”と言いましたが、もちろん優越感も感じているんですよ。ボクを受け容れているのは、素晴らしい名器なんですよ、ってね」
『名器』という言葉は、褒め言葉なのか、それとも都合のよい道具という意味なのか、すぐにはわかりませんでした。それでも、△井の口調には品定めをするような響きはなく、なにか大切なものを自慢するような響きがありました。そのようなことを感じてわたしは素直にうれしいと思ったのでした。
「いや、それにしても、今日も奥さんの新たな一面を知ることができました。ばあさんに礼を言わないといけないな」
「新たな一面…」
わたしはもっと正確に記憶を呼び戻そうとしました。△井は興味深そうにニンマリと笑って私を見ています。
「ああ、いや、すみません。ボクが”新たな一面”と感じただけで、奥さんにとっては本当の奥さんなのですよね。奥さんが愉しんでいただいていただいているだけで、うれしいですよ」
そのようなつもりはない…などと思っても、我を忘れてしまっているのですから、結局はそういうことなのでしょう。少なくとも夫との営みでこのようなことはないのですから。わたしが『名器』かどうかは知りませんが、これからも毎回確かな腕前でわたしを丁寧に扱ってくれる△井の手に掛かりたいと思いました。
△井が言っている意味がわからないような、わかるような。
「なんというか、二重奏とでも言えばいいんですかね」
「二重奏…」
「そう。向こうもこちらも良妻賢母。良妻賢母の二重奏」
△井は、ここに来ると『良妻賢母』という言葉を使います。連れ込み旅館といちばん縁遠い言葉と知っていてのことでしょうけど。
「やっぱりここはいい。奥さんも気兼ねなく鳴いてくださる」
(鳴く…)
△井が『奥さん』と呼ぶのはいつものことですが、わたしも何か壁の向こうと呼応して『鳴いて』いたのでしょうか。
(そう言えば…)
記憶が徐々に戻ってきます。アクメに達しようとしているお隣さんの声が聞こえたとき、わたしもいよいよ強い快感がからだを走って耐えきれなくなり…。
「お隣に”親しみが湧いた”と言いましたが、もちろん優越感も感じているんですよ。ボクを受け容れているのは、素晴らしい名器なんですよ、ってね」
『名器』という言葉は、褒め言葉なのか、それとも都合のよい道具という意味なのか、すぐにはわかりませんでした。それでも、△井の口調には品定めをするような響きはなく、なにか大切なものを自慢するような響きがありました。そのようなことを感じてわたしは素直にうれしいと思ったのでした。
「いや、それにしても、今日も奥さんの新たな一面を知ることができました。ばあさんに礼を言わないといけないな」
「新たな一面…」
わたしはもっと正確に記憶を呼び戻そうとしました。△井は興味深そうにニンマリと笑って私を見ています。
「ああ、いや、すみません。ボクが”新たな一面”と感じただけで、奥さんにとっては本当の奥さんなのですよね。奥さんが愉しんでいただいていただいているだけで、うれしいですよ」
そのようなつもりはない…などと思っても、我を忘れてしまっているのですから、結局はそういうことなのでしょう。少なくとも夫との営みでこのようなことはないのですから。わたしが『名器』かどうかは知りませんが、これからも毎回確かな腕前でわたしを丁寧に扱ってくれる△井の手に掛かりたいと思いました。

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