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わたしの昼下がり
第36章 手順
 夫と娘たちが家を出て行く。朝食の跡片付けを終えて食卓を布巾で拭く。ふとリビングのソファーに目が留まりソファーもタオルで拭いていると電話が鳴る。

 「では、今から伺います」

 電話でわたしがひとりになったのを確認した△井が来た。

 「奥さん、今日は時間があるんですが、長居させてもらっても構いませんか?」

 事を済ませると、大抵、昼前には帰っていくから、今日はお昼を跨ぐということだろうか。とは言え、娘は四時頃までには帰ってくる。いつもは、娘が返ってくる前にスーパーマーケットで食材を買ってくるが、冷蔵庫のあり合わせで夕ご飯は何とかなるだろう…わたしは頭の中でそんな算段をしている。

 「はい。大丈夫です」

 『構いません』ではなく『大丈夫です』などと答えてしまう。

 「すみませんね、無理を言って」
 「いえ…」

 今日も△井は出社した後、会社の車で団地外れまで来て、車は空き地に停めてから電話をかけ、そしてここに来ているはずだ。

 (いえ、無理などということはありません。でも、お仕事の方はいいのですか?)

 ふとそんなことも気にならぬではないが、以前、△井のセールスマンとしての成績は常にトップだと言っていた。このあと大きな仕事があるから、という理由でここに来たこともあった。わたしが心配するまでもなく、日々、営業成績を稼いで自由時間を作り出しているのだろう。むしろ、わたしにとって都合のいい時間に都合をつけてくれているのは△井の方だ。

 「ほら、いつもすぐに始めて…、じゃないですか。たまにはちゃんと手順も踏ませていただかないと奥さんに失礼かと思いましてね」

 △井が本当に”失礼”などと思っているわけではない。いつもの△井らしい物言いがわたしを静かに昂ぶらせる。確かにそのような具合に進むことが多いが、”失礼”などと感じたことはなかった。
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