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わたしの昼下がり
第32章 キッチンドランカー
 『度を越して』という言葉が『度を越してしまった』わたしには胸に刺さる。大げさに言えば…だけれど。今のわたしは『深酒』だろうか。度を越してしまったら深いも浅いもないのだろうけど、家事もこなしている、家族はわたしの『異変』には気づいていないはず。中毒というほどでは…。

 「お台所で飲まなければ『キッチンドランカー』ではないのですよね?」

 さっき質問した母親がまた質問し、笑いが起きる。

 わたしが『あのお酒』を飲むのは寝室がいちばん多いけど…。リビングでも飲めば、それこそキッチンでも何度も飲んでいる。口いっぱいに広がる濃厚な匂いが甦って、舌に絡みつく粘り気とぬるりとした喉越しが欲しくなってくる。つい昨日飲んだばかりなのに。やはり、もう中毒なのかしら。

 「結局、どうすればよろしいんでしょうねえ?」
 「そうですね。やっぱり、疲れをため込まないことや、ご近所づきあい、いろいろご趣味など家庭以外の楽しみを持つことが予防につながるんじゃないでしょうか」

 (家庭以外の楽しみを持つこと…)

 一人で抱え込んでいた頃に比べればわたしは健康かもしれない。明日は△井が来てくれる。ご近所との井戸端会議では決して話せないことだけれど。

 いつの間にか、つまみ食いではなくメインディッシュになっている△井。メインディッシュをいただく前に、今度は食前に上のお口でいただきたくなった。さしずめ食前酒として。

 (飲みたいんですか? 奥さん…)

 わたしは納得して小学校を後にした。明日は△井が来たらキッチンで待っていよう。△井も好きなキッチン。

 (ここで…お願いできますか)

 うつむいてつぶやくわたし。恥ずかしいけれど。

 (最近、お好きですね。止められなくなりましたか? 椅子に座る暇もありませんね。まあ、仕方がない。お召し上がりいだきましょうか)

 わたしはキッチンドランカーで構わない。
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