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わたしの昼下がり
第2章 よろめく
 △井が美味しそうにたばこを吸ってふうっ…と吐き出しています。どこまで本当の気持ちかわかりませんし、褒められているのか皮肉られているのかもわかりません。モーションをかけたつもりはありませんでしたが、『一目見た』ときのわたしはさも物欲しそうな貌をしていたのでしょうか。そうかもしれません。いつか男をくわえ込みたいって思っていたのですから。とにかく嫌がるでも騒ぐでもなく抱かれたのですから『都合のいい女』と見られたのでしょう。それでも構わないと思いました。

 △井が今度来るというときに、奥さま連中に見とがめられないことを願いました。みんな悪い人じゃないけど、『オトナの付き合い』を黙って見過ごしてくれるようには思えませんから…。

 『ご主人『○○○〇〇〇』をお吸いなんですね。ボクも今度からこれにしますよ』

 確かに灰皿に自分が吸わない銘柄の吸い殻があったらおかしいし、タバコの香りも多分違ったりもするのでしょう。

 夫の嗅覚がそこまで鋭いようには思えませんけど、細心の注意を払った上で忍んできてくれそうな△井に心も少し動いてしまいました。身体だけでなく…。この男なら奥様連中の眼もかいくぐってくれるだろうと思いました。

 (今度はいつ…?)

 そう思うわたしの心理を読んでくれたのでしょうか、△井が囁きます。

 『明日にでも…』

 (明日…)

 『明日にでも…またお邪魔したいところですが、人目については奥さんも御迷惑でしょうから…そうですね…2週間後くらいにまた…今日と同じくらいの時間でよろしいですか』

 (2週間…)

 『では2週間後に…。ああ…もちろんのことですが、急にご都合が悪くなったりご不在になったりしていても全く構いませんから。チャイムを鳴らしてしばらく何もなければおとなしく帰りますので』

 △井が手早くスーツ姿に戻っていきます。細かい段取りがこうした情事の経験が豊富なことを思わせました。

 『次回が楽しみです』

 そう言ってわたしの唇をひとしきり貪ります。

 『膣内《なか》で射精《だ》させてもらえるとは思ってませんでしたよ…。ご主人ともちゃんとヤっておいてくださいね…』
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