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わたしの昼下がり
第39章 連れ込み旅館で(2)
 「まだ、時間ありますよね?」

 △井が、床の間の電話機から受話器を取り上げ、帳場に時間の延長を告げるとタバコをもみ消しました。

 「お隣さんはお帰りになっちゃいましたが、構いませんよね?」

 △井が冗談めかして言います。団地では気になる周辺の人の気配も、ここでは同じ秘密を抱えた『似た者同士』が集っていることを知らせ合っているのだと思いました。

 「じゃあ、今度は…」

 △井がわたしの体に触れて後ろを向くように促します。わたしは、いそいそと向きを変えます。四つん這いになってお尻を向けているなんて、はしたない体位だと思います。でも、『本当の自分』に戻るにはふさわしい形だと思いました。

 『本当の自分』が満たされてさえいれば、満たす相手が誰かや、満たされ方はともかく、『良妻賢母』でもあり続けられるのです。わたしは、背筋を反らせて△井を迎える構えを取って目を瞑りました。
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