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第33章 決戦は金曜日

「独身だそうだ」

と、端的に答えた義隆。

「そう」

と、だけ答えた実雅子。

「会って積もる話をしながらランチかディナーをしてきたら？」

勧める義隆。

「そうね」

と、頷きながら、

　　　　昨夜の続き？
　　　　それも悪くは
　　　　ないけど。
　　　　本音を言わないのね。

実雅子は義隆を見た。どのように話を運ぶか苦心しているように見えた。

　　　　まずは、
　　　　会うというべきね。
　　　　このままでは、
　　　　前に進まないわ。

「まず、会ってみるわ。20年ぶりの再会」

と、実雅子は笑った。

　　　　昨日、
　　　　会ったばかりだけど。

義隆は安堵した様だった。行き詰まりかけた話が前に進んだからだろう。

　　　　形式としては、
　　　　これでいいはず。

実雅子は義隆に、

「ランチのアポイントをお願い」

と、言った。義隆が、

「任せてくれ」

と、スマートフォンを取り出し通話した。

「ランチをと妻は言っている」

と、伝える義隆。先方が話をするのを聞いている義隆。

「わかった。そう伝える」

と、言った義隆は通話を終えた。

「西宮北口の○○ハウスの住宅展示場に来週の金曜日の午正午に、俺とお前。向こうは佐川翔太と、担当だった福永、その上司の篠崎課長だ」

と、話した義隆。

「住宅展示場？」

実雅子は首をかしげた。

「打ち合わせするスペースがある。あそこなら誰にも話を聞かれず、二人だけで話せる。俺と福永や課長は早々に退散するから、ゆっくり話して、午後２時くらいに近くの店でランチをして、ゆっくりして来いよ」

と、話す義隆。

「そうね。そんなに時間が必要かわからないけど。思い出話はあまり聞かれたくないものね」

と、実雅子は答えて笑った。

実雅子と話を終えると、

「そろそろ戻る」

と、歯科医院に戻った義隆。

　　　　これで第一歩は
　　　　踏み出した。
　　　　しかし、実雅子は、
　　　　堅いな。

改めて妻の男嫌いというか貞操観念の強さを確認した思いの義隆。

義隆を見送り、リビングのソファに座って、

　　　　これが第一歩。
　　　　罪悪感しかないけど
　　　　これも二人のため。
　　　　夫が望んでいることを
　　　　叶えるだけよ。
　　　　夫が望んだこと。
　　　　少なくとも、
　　　　二人が会うことは。