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第33章 決戦は金曜日

眠れない佐川。少し走って、気晴らしをすれば寝れるだろうと、アパートを出て、会社から貸与されているアクアに乗った。扱いにくい車だが、慣れた。そもそも小さいから小回りはいい。深夜の国道43号。さすがに車は少ない。輸送のトラックは走っているが。西宮市を経て蘆屋、東灘区、走り抜けていく。今度は国道２号で、戻る。

　　　　この辺りだな。
　　　　実雅子の家は。
　　　　寄ってみるか？
　　　　この交差点の
　　　　次の交差点の
　　　　南西角。
　　　　な、なんだ、デカい。
　　　　しかも、高い擁壁。
　　　　掘り込み駐車場も
　　　　大きい・・・。
　　　　設計事務所で、
　　　　ゼネコン施工とは
　　　　聞いていたが・・・。
　　　　というか、カッコいい！
　　　　こんな立派な家に、
　　　　実雅子は住んでいるのか。
　　　　こんな家、いくらする？
　　　　土地だけで坪200万。
　　　　300坪だとすると、６億。
　　　　坪単価150万としても、
　　　　平屋で専有面積150坪か？
　　　　外構も入れれば、２億。
　　　　代々歯科医はそんなに
　　　　凄いのか・・・。
　　　　実雅子の旦那は、
　　　　何もかも手に入れた男か。
　　　　子供以外は・・・。
　　　　歯科医師としての名声、
　　　　この豪邸を含む資産、
　　　　そして、美人妻。
　　　　人も羨むというのは、
　　　　こういう時に
　　　　使う言葉なのかもな。

電気の消えた豪邸を見上げながら、ため息を吐いた佐川。そこに、タクシーが来た。慌てて、アクアに乗り込み、座席に潜り込む佐川。タクシーが実雅子の家の前で停まった。降り立ったのはスラッとした姿勢の良い男。支払いは車内で終わっていたのか、走り出したタクシーを見送る男の姿。

　　　　実雅子の旦那か。
　　　　紳士といえば、紳士。
　　　　大人しそうな男だ。

カード式なのか、何もしないでも開く門扉。オートロックで締まった。その後を姿を見る佐川。

　　　　アポイントが
　　　　取れるかどうか。
　　　　そこだな・・・。

佐川はそう思いながら、エンジンスイッチを押して、走り去った。