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第33章 決戦は金曜日

期待と不安。綯い交ぜになっている実雅子の心の内。

　　　　どちらにしても、
　　　　翔太くんの先輩と、
　　　　翔太くんが夫の同意を
　　　　得られたらの話。
　　　　夫がわたしに
　　　　意見を聞くかしら？
　　　　今まで、何でも、
　　　　自分一人で
　　　　決めてきたけど。
　　　　さすがに、今回は、
　　　　聞くわよね・・・。

不安を胸に、帰宅しない夫を待たず、眠りについた実雅子。

同じ時刻。佐川はワンルームのユニットバスでシャワーを浴び、シングルベッドの上で天井を睨んでいた。

　　　　本当にこれでいいのか？
　　　　これでいいんだ。
　　　　幼馴染だというだけで
　　　　信用するアイツが
　　　　バカなだけだ。
　　　　信用されているのに
　　　　裏切るのか？

　　　　本当に鬱陶しかったのか？
　　　　嬉しかったんじゃないのか？
　　　　好きだったのは嘘じゃない、
　　　　でも、それは過去だ。

　　　　アイツがいたから、
　　　　頑張れたんじゃないのか？
　　　　いつか、会うとき、
　　　　恥ずかしくないようにって
　　　　それは、気になっていた、
　　　　好きだということじゃないのか？
　　　　いや、違う。
　　　　俺はアイツを
　　　　見返したかっただけだ！

　　　　俺は、屈折しているのか？
　　　　自分の失敗をアイツのせいに
　　　　しているだけじゃないのか？
　　　　一緒の小学校、同じ塾に通い、
　　　　中学受験をして・・・。

　　　　追いつこうともがいてきて、
　　　　W大文学部に入学して、
　　　　これで勝てたと思ったのに、
　　　　アイツはK大工学部に・・・。

　　　　ホストで成り上がるつもりが、
　　　　成り上がれず、就職して、
　　　　一部上場企業。
　　　　これで勝てるかと思ったら、
　　　　アイツは金持ちの歯科医の妻。

　　　　憎いと思って何が悪い。
　　　　必死に深夜まで残業して、
　　　　頭を下げまわって、
　　　　稼ぐ金以上の金を
　　　　夫から与えられるだけの女。

　　　　俺の年収２年分の車に乗り、
　　　　俺の年収の装いで、
　　　　センチュリオンカードで決済。
　　　　男の俺に支払いもさせない。
　　　　どうせ経費で落とすとはいえ、
　　　　男を立ててくれてもいいだろうに。